否応なしに報われない




※ラモンさんと部下達のキャラ崩壊注意報発令



「先生、寒くないですか?」

「……いや」

「…そうですか…」

「…………」

「じゃあ何か必要な物とかは、」

「別に…」

夜のラモン邸の入口前。デュエルタイムを終えた町中は怖いくらいに静かであった。
黒塗りのバイクから降りて直ぐにラモンは京介からヘルメットを受け取り、さっさと歩き始めてしまう京介の横を着いて歩く。
力ある者へのごますりと好きな相手へのアピール紙一重のその行動を、ラモンの部下達は数歩間のあいた後ろから着いて行きハラハラと眺めていた。
ラモンがあれこれと尋ねる京介は、斜め下を見るともなしに見ながらすたすたと歩く。ラモンを見向きもせず、我関せずとラモン邸の入口へと向かっていた。
ぽけーっと擬音が付きそうな程に無気力な京介と、その人の気持ちを引き出そうと必死になるラモン。そしてそれを見守る部下数十名。
京介は本当にラモンがどうでも良いらしい、というより、何もかもどうでも良いようで話を聞いているのか分からない程にラモンへの返事は虚ろだ。
こんな京介の何処にラモンは惹かれるのかと言えば、多分そんなところなのだろう。

「せ、先生……その、夕食一緒に取りませんか?」

「……夕食…?」

夕食に誘ったのが初めてだからだろう。珍しく疑問詞で返る返事にラモンの口角が上がる。声も少し跳ね上がりまるで子供のように嬉しそうな声が出てしまいそうになったが、流石に抑えた。二三回小さく小さく咳ばらいした後、ラモンは何食わぬ顔で続ける。
大きな玄関の扉を部下が開け放ち、それを潜れば広めのエントランスホールに入った。

「先生はあんまり飯食わないみたいですし、何か特別に作らせますよ」

「………」

「あっと…その、二人で、えーと…食いませんか?」

「部屋に戻る……」

すたすたすた。長い髪を翻し、何食わぬ無表情で京介は自らに宛がわれた部屋へ向かった。1階の隅にあるその部屋へ向かい、一つ扉を潜ってさっさと消えてしまう。
無視や嫌がらせではなく、心底どうでも良かったのだろう。酷く淡泊な拒否である。

「ら、ラモンさん落ち込まないで下さい!!」

「そうですよ、きっとお腹空いてなかったんですよ!!」

目に見えてショックを受けている様子のラモン。呆然とその場に佇み俯き笑顔を浮かべている、真っ白に燃え付きているという表情が合うだろうか。
必死に部下達が慰めに入るが小さく頭を振るのみで、相当ショックだったのだろうと嫌なくらいに伝わってくる。

「……いいんだ、先生は…俺の事なんて眼中にはないんだ…眼中には………………」

「ちょっとラモンさん、自分で言って自分でダメージ受けないで下さいよ…」

「先生はほら、疲れてるんですよきっと!」

「…そうかなぁ…」

「そうですよ!」

なあ、と一人が促せば数人が同意して見せる。
やんややんやとそれらしい理由を付け加え、最終的には「今日のデュエルはやけに長引いたから、先生は大分疲れたんだろう」なんて結論に至った。
暫くは俯いていたラモンだったが、次第に元気を取り戻し、最後には「だよなぁ!」の連発。変に自信まで持っているのだから頭が単純な作りをしているのだろうとしか言い得ない。

「よし!今日の先生の部屋に食事運びに行く担当誰だ!」

「あ、俺ですラモンさん…!」

「よし今日は俺がやる、代われ!」

「了解です!頑張って下さい!」

なんだかいきなり目茶苦茶元気だなぁ、と殆どの部下が思ったが言わず、ただただ応援の言葉を掛けた。いつもの事である。

「食事持って行った時、何言えば好感度上がると思う?」

「ええ…なんでしょう…」

はた。ラモンがいきなり部下達を見回し尋ねる。自分の実力では素晴らしいスルースキルを発動されてしまうと本心で気付いてしまったからか、目が本気だ。
十数人の部下らがはて、と考えるような仕種を見せてみる。それを急かすように言えと促すラモン、と、まるで遊びを提案する子供の群れのような光景だ。

「あ、じゃあ……残したって構いませんからね、とか言って、余裕見せたりしたらどうですか?大人の余裕的な…」

「おおそれいいな…!……ああでもなんか嫌味っぽくねぇか?」

一旦は嬉しそうに言ってみせたラモンだが、自分が言う光景を想像しては押し止まる。
提案した金髪の青年であれば、爽やかな笑顔でもって言える台詞である為にキザに聞こえようとも嫌味には聞こえないだろう。しかしラモンでは話が違う。ガラが悪いと言える彼はそれを自分でも分かっているようだ。

「あ、じゃあ逆に厳しくするとかどうですか?」

「あ?どういうこった?」

「重宝されてるからって調子乗るなよ、出された飯くらい美味そうに食ってみろよ。とか言ってみてラモンさんの印象を変えれば…」

「それ確実に先生に嫌われんだろうが!!阿呆かテメェは!!」

ばしん、と頭の叩かれた音がエントランスに響く。音ばかりが大きいそれほど勢いの付けなかった攻撃だが、部下はラモンに叩かれた箇所を痛そうに撫でてみせた。
ガラの悪いラモンが先程の台詞を言ってみせれば、迫力は素晴らしく溢れ出るだろう。そこは否定出来ない。それが自負出来ているからこそラモンは苛立っている。

「っ…いやでも、先生ってデュエル強いから俺達へりくだって接してるじゃないですか」

「まぁな」

「だからそこでラモンさんが強気でいってみたら、ぐらついてラモンさんに対して弱々しくなるかもしれないですよ」

「………」

弱々しい先生。と、ラモンは想像してみる。
動じない態度が変わって、ラモンの一挙一動にビクビクとし、あの死んだ目に涙が滲み声も震える。そしてラモンの様子を伺う。そんな京介を想像して、ラモンは奮えた。

「……それこそ先生に嫌われてるじゃねぇか…」

「え、あ、はい、そう…ですね…確かに…」

「………………でも別に嫌われててもいいか!」

どうせ今の調子じゃあ先生俺に冷たいし、だったら少しくらい嫌われてもビクビクと俺の機嫌を伺うようなそんな感じになってくれたら全然満足出来る!とラモンは嬉しそうに語る。
それを部下達は複雑そうに、しかし応援しながら眺めた。
報われない上司には幸せになってもらいたいとは思うのだ、一応。

結局その上司は食事を運搬した後、頬に大きなビンタの痕を作って帰って来た。



***



ラモ京(アニメ沿い)で頑張って自分をアピールしてるラモンと、まったく気がつかない鬼柳と、応援する部下でギャグ風味 というリクエストでした。ギャグ難しいですね…しかし、風味、なので…とか言い訳ですね…ははは申し訳ないです…!orz

もうこれラモンさんやない。ただのオッサンや。キャラ崩壊し過ぎですいませんでした!

ちなみに食事運んだラモンさんは、あの台詞+押し倒したりしました。無気力な筈の鬼柳さんに水落蹴られて頬叩かれて「死ねオッサン」とか言われました(笑)

なんかもう苦情受け付けておりまする…!ぐだぐだと申し訳ないですっ…!

では、リクエストありがとうございました!








小説置場へ
サイトトップへ


 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -