満足さんへの第一歩を踏み締める鬼柳



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母親は居なくて、血が繋がっているのかも知れない父親だけが自分の肉親であった事をよく覚えていた、何故かと言えばその父親が酷い人間で毎日毎日辛い人生を踏み締める日々だったからだ。内容なんて思い出せないし出したくもない、思えばあんな小さな頃から俺は前だけを見ていた気がする、振り返りながら歩く人生なんて蹴つまずく他無いのだから、そう考えて生きていたのだ、足元をよく見て前を見て必死に歩いた。そして全力で走れる年齢になった時には過去を振り返らずにがむしゃらに走った、父親の血で濡れた両手すら見下ろさずにただただがむしゃらに走った、気付いたら廃屋ばかりの港に着いていた。

人生は一転した。ただ理由もなく虐げられる人生は消えたのだ。力があればそれなりの地位へ足を付けていられる安定感、なにより、充足感、自分はみるみる父親のいない世界の魅力にハマっていった。
誰も頑張る自分を馬鹿にはしない、ただただ実力を見遣る。それが幸福で幸福で、幸福が満杯である状態を覚えた俺は常にそうある事こそが世界を生きる上で必要なのだと考えるようになった。満足する事が目標になった。



 





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