双子な京介と狂介と末っ子馨介



*



俺には兄が二人いた。京介兄さんと狂介兄さんは双子で、互いによく似ている。かくゆう自分も、二人にはよく似た容姿をしていたが、二人の似た部分は何も見目のみを言う話ではなく別問題なのだから俺では到底及ばない、双子の力というものを日頃感じていた。二人は仕種や感性がよく似ている。見ているとよくわかった。


「馨介、聞いたぜ、書いた作文が賞取ったらしいな!」

京介兄さんが、まるで自分の事のように嬉しそうに俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。まるで犬や猫でも愛でるように目茶苦茶にするけれど、表情は満面の笑み。俺はその笑顔が好きだ。
自慢するのも謙遜するのも可笑しい話かと、ただそっと笑い返せば、京介兄さんは更に嬉しそうに笑ってくれる。

「でも、ま、佳作だろ」

つまらなそうな声色で、狂介兄さんが言った。その手には俺が貰った佳作入選の賞状があり、それを眺めてから狂介兄さんはこちらを見る。
それを見て、ぶー、と京介兄さんは口を尖らせた。そして俺の髪の乱れを直してから、立ち上がる。

「なんで狂介はそーゆーマイナスな事しか言えねぇんだ?兄ちゃん悲しいんだけど!」

「双子に兄も弟もねーし。つか、佳作は佳作だろーが」

狂介兄さんの襟首を掴み、がくんがくんと揺さ振る。その様を見て、俺はいたたまれなくなった。
確かに佳作は佳作だ。何も間違っていない。でも褒められてとても嬉しかった。なのに狂介兄さんは褒めてくれない。
しかも、自分が原因で二人が喧嘩をしている。俺は、なんだか、存在しちゃいけないんじゃないか。なんて考えてしまう。

「……ま、大人も参加すんのに都内で佳作取れんのは、15歳にしちゃ最高の出来だけどな」

がくんがくん。揺さ振られながら狂介兄さんがぽつりと呟いた。
は、として狂介兄さんを見上げると、狂介兄さんは笑っている。照れ臭そうに「頑張ったな」はにかむ様子が物珍しくて、それからとても嬉しくて、俺はそれに笑顔でもって返した。



 

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