現パロ
ルチアーノの家の使用人家系の子なプラシドとお坊ちゃんなルチアーノ



*



「お前なんなの」

ルチアーノは、黙って自分の足元の昨晩新調したばかりのカーペットに染みが残らないように、と淡々と役目を熟すプラシドを呆れを過ごしてうんざりするように見下ろした。
ルチアーノの片手には先程まで暖かい紅茶が入っていたカップが握られており、中には何も入っていない。カップはまだ暖かみを持っている。

中身の紅茶は全て、ルチアーノが目の前に立つプラシドにひっかけた。

熱湯という訳ではないので、プラシドの体にはなんら支障もない。しかしプラシドからすると、使用人の為として渡されて着ていたスーツの上着が完璧にダメになっているのが気掛かりだった。
それから、足元のカーペット。紅茶には必ず少量のミルクと大量の砂糖を加えるルチアーノの、飲み途中の紅茶であったから、プラシドは顔には出さないが心底焦っていた。

「なァ、返事しろよプラシド」

「“お前なんだよ”とはどういう意味合いでの質問だ」

「………叱ったりしないのかって」

「…………」

頭を垂れたルチアーノは、珍しく弱々しく見えた。プラシドは吃驚したように作業を止め、しゃがみ込んだままルチアーノを見上げる。ルチアーノの表情は読めなかった。
なので、プラシドは考えながら言葉を言う。

「俺は使用人だ、残念ながら」

「だったら言葉遣いどうにかしろよ」

「俺はあくまで貴様の両親、お二方に仕えている。貴様はオマケだ」

「母様の好きなカーペットだし、だから僕を恨むより先に綺麗にするって?この機械人間が」

会話の必要性が曇り、プラシドは上げていた視線を下げて作業を再開した。
勿論、頭上からはぎゃあぎゃあと文句罵倒様々な言葉(何処で覚えるのやら)が降って来る。しかしプラシドは慣れたものなのか、さして気にしないまま、カーペットの薄くなった染みを眺めた。

「だがまあ、叱って欲しいのなら叱る」

「は………はぁ!?ばっかじゃないの!?どんだけマゾだよ僕!!ばぁあか死ねプラシド!!」

「………違うのか」

叱って欲しそうな顔だったが、とプラシドは感慨深そうに呟きながらルチアーノを見上げた。ルチアーノの顔が真っ赤で、プラシドは上げた視線をそのままに首を傾げる。

「どんな顔だよお前本当自意識過剰をどうにかしろ!!絞るぞ!!死ね!!」

「言葉遣いを正した方がいいのは貴様だろう。この距離なら聞こえるし、声量はもっと下げて構わない」

「五月蝿いプラシドのクセに生意気だ!!お前なんか上体もげて死ねばいいよばぁああか!!」

やはり意味を成さないな。プラシドはぼんやりと考え、再び作業に戻った。



 

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