ブレオが大好きなアンドレとアンドレをチームメイトとしか認識してないブレオ
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ソファで眠るブレオを見掛けて、俺は出掛けようかと考えた思考を停止、片手に持っていた携帯をソファ横のシックな椅子に置いてブレオの寝顔をじいと惜し気なく眺めた。
仰向けで眠るブレオは肘掛けに後頭部を任せ、腹の上にパソコンを置いたまま熟睡している。画面の暗くなってしまったディスプレイを覗き込み、マウスを少しずらすと沢山のデュエリストのデータを閲覧している途中だった。
ついそれを見てくすりと笑ってしまい、俺は誰にでもなく「全く…」と呟いてそのパソコンをブレオの腹の上から退かし、俺が携帯を置いた椅子の上へと置いた。それまで意識下なのか無意識でなのか、寝返りを規制していたのだろうブレオは「んん…」と呟いて小さく伸びをした後、ごろりと背もたれの方へ向けて寝返りをうつ。
俺はそれを眺めて、時間差で熱くなって来た顔を抑えて二三歩後ろへ退いた。
(……っブレオ、可愛い…)
よくブレオは俺に「アンドレは何気ない仕種が女性の人気に繋がってるんだな」なんて気さくに言うけれど、俺からしてみればブレオの方が何倍も何倍も何気ない仕種が愛しさへ繋がると思う。ただそれが本当に、全力で無意識なのが困るんだ。
ブレオが身じろぐ度にさらりと流れる金髪も、物腰も吐息も、全部全部全部好きだ!正直言えば抱きしめたいしキスしたいし、それに抱きたい!抱かれたいじゃなくって抱きたい!
好きだ、と、そう本人に言った時の反応をよく覚えている。なんだったか…「そりゃあどうも」だったかなんだったか。まあとにかく爽やかだった。
意味が通じてないのかと思って、「男女間で抱く感情と同じなんだ!」と言ったら「……ごめんな、それは無理だ。男は抱けない」だったか。そうして、今まで通り深い友情で結ばれた関係を繋いで置きたい、と言われて俺は了承した。
流れに負けたが、これは訂正しておきたかった。まあ今じゃ遅いが…
「……抱かれたいんじゃなくて、抱きたいんだよ…ブレオ」
ぽつり。静かな部屋に響く。ブレオはまだ寝ていて、背もたれに向けてぐうぐうと疲労感溢れる吐息を漏らしていた。
俺は空回りする感情が激しく虚しく感じたので、ごまかすように頭を振ってからブレオの寝るソファに手を着く。
「……なぁ、ブレオ」
返事は勿論ない。体重を乗せたソファはぎしりと音がなった。
それが原因か、ブレオは唸りながら身じろぎをして、ぐるりと再び寝返りをうつ。
俺は内心焦りながらも平常を装ってソファから手を離した。しかしまだ目の前にブレオはいる。
ブレオはゆるゆると瞼を開け、完璧に開けると再び瞼を閉じて、くあぁ…と欠伸をした。
「よ、よう、ブレオ」
「…ん、おはようアンドレ」
「…もう13時だ」
「本当かよ……なんか最近、俺の生活リズム狂って来てるな…」
んーと伸びをして、ブレオは少しばかりソファから浮かせた体を再びソファへ沈めた。俺はそれを眺めて、それからブレオと目が合ったので、嬉しさから今日最高になりそうな笑顔でもって返す。するとブレオは困ったように笑った。
「そういう笑顔は可愛い女の子にしてやれよ色男君」
なんて事ないとばかりにそう言い、ブレオは俺の頭を撫でる。
子供や女の子にするようなその仕種に、俺は肩をすぼめて俯くしかなかった。
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