足並み




朝、目が覚める。日曜日だという事を思い出して、枕元にある携帯を確認した。
コインランドリーに洗濯物出しに行くか、と呆けた寝起きの頭で考える。だがその前にもう一度寝よう、と考えた。ざんばらに掛かった自分の黒い前髪を退かして、ぐるりと寝返りを打つ。
そこで目は完璧に覚めた。


「…は?」

自分のベッド(女遊びが絶えない為に広いベッドである)の中に、自分以外もう一人睡眠を取っている人物が居た。自分より若い上司だ。名前は鬼柳馨介。

しかも裸という訳のわからない状態。血色の悪い肌が布団から出ている。ふと自分の姿を見ると、自分も肌だった。しかしジーパンは穿いている。すぐに布団をゆるりと退かして、鬼柳さんも確認した。ああ同様にジーパンを穿いている。良かった。

いや、なんの確認をしてんだ。
違うだろう、この状況がまずわからないだろう。
何故俺の家に鬼柳さんが居るんだ。

思考が嫌というくらいにハッキリしてきたそこで、ずんと頭が痛む。二日酔い独特なそれに眉根を寄せ、室内ぐるりと確認した。床には酒の缶が落ちていて、ああと次第に記憶が蘇る。

呑んだんだ、この人とこの部屋で。この部屋に来た時には、その前にいた店で既に結構呑んでいた後だったが。

とりあえずベッドから降りる。ぐしゃりと缶を踏んで、鬱陶しいそれを爪先で蹴った。床にはそれ以外にも俺の服と、鬼柳さんの服や荷物が落ちている。
いやしかし大の成人男性が二人してベッドに収まるなよ気持ち悪いな。ぐしゃりと後ろ頭を掻いた。





朝、目が覚めると見知らぬ場所に居た。自分のベッドより広い。それに煙草の臭いが染み付いている。ああでも嗅いだ事のある臭いだ。
普段視界を遮る自分の薄水掛かった灰の髪が、更に視界を遮る。ぞんざいに払い、起き上がった。辺りをぐるりと見回すと、床にはビールの缶が散らばっている。それから酷く頭が痛んだ。二日酔い、か。あまりした事がないので変な感じがする。

ベッドから降りると自分はジーパンしか着ていなかった。少し寒くて、床に落ちている自分の服を拾い上げる。

壁には見たことのある歌手のポスターが貼ってあった。名前は分からない。

とりあえずこの部屋から出ようと扉を開けると、前方にラモンが立っていた。俺同様ジーパンしか着ておらず、髪は普段より更に秩序がない。首にタオルを掛けていた。
ラモンは俺の部下だ。何故居るんだ?と首を傾げると、ラモンは苦笑する。

「おはようございます」

「……ああ」

「店で酒呑んで酔っ払ってこの俺の家で更にへべれけた後に酔い潰れてお泊り。オーケイですか?」

「ああ、なるほど」

分かり易い説明だ。かくんと頷くとラモンは嬉しそうに笑った。



***



馨介さんは優秀なのになんか抜けてる人で、ラモンは馨介さんをよく理解している部下(^ω^)






小説置場へ
サイトトップへ


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -