空々に贖い




※性的描写有



ラモンという男は部下達やマルコムのグループの奴らとあからさまに違っていた。俺がデュエルタイムまでの時間を何するでもなく過ごす間や、デュエルタイム終了後は誰一人として関与はして来ない。しかしラモンは、あいつだけは違う。世話を焼きに来る。

今日もそうだった。日中の俺は大体ラモングループの館内に設けられた一室で時間を潰す。寝台があり、時計があり、机と椅子があった。後は何もない。食事は時間になるとラモンの部下が運びに来るのだが、やはりその間も関与はない。ラモンが来るのは決まって食事の後だ。
朝食後は今日のデュエルについて予定を組む為、昼食後はそのまま一緒に移動する為、夕食後は今日のデュエルについてを話す為。そう言ってラモンはいつも俺の部屋を尋ねる。
俺に度々関与するその理由はよくわからない。俺は機嫌を取られようが取られまいがデュエルは続けるのだから。まあこの世の中、デュエルが強い者が崇拝され先導者となる。だからそういった考えで純粋に尊敬されているのか、なんて。
そこまで考えて遊星達の姿と、彼等との思い出が頭に過ぎる。同時に胸が酷く痛んだ。慕ってくれていた彼等と、憎んでしまった俺。なんという事をしてしまったのだろうか。この町に来てから、何度罪悪感に押し潰されそうになったか。
ああして笑って俺を受け入れてくれようとした遊星達は、本当はなんと思っているのか。怖い。怖くて考えたくない。そうして考えがぐるぐるとさ迷って混乱していたのが、夜の事だ。寝台に横になって考えていた所を、ラモンがまた訪問したのである。

普段通りラモンは返事を待たずに扉を開けた。サイドランプしか点けていなかった暗い室内にラモンの足音が響き、それからラモンは電気は点けずに寝台横にある椅子へ腰掛ける。それを瞼を閉じたまま把握し、いっそ狸寝入りでも決め込むかと考えた。が、ラモンはそれを察したのかなんなのか、ぎしりと音を立てて寝台に手を着く。

「先生、コートを着たままだと皺になりますし、布団の上に寝てしまってるんでは風邪をひきますよ」

「……………ああ」

そう極めて真面目に言い、ラモンは俺の肩を撫でた。子供にするようなそれに従い、俺は寝台に手を着いて体を起こす。自ら行動しなくては後が面倒だ。何度もされたからよく知っている。

ラモンは、なんでか俺に甲斐甲斐しく世話を焼いた。というより気を使う。デュエル帰りに寒くないかと気を使われ、料理に好みや嫌いな物があるかとも聞かれた。それと用があったらぜひ呼んでくれ、と…これは日に何度も言われる。とにかく気をつかい、それから頼るようにと念も押した。よく意味がわからないが、慕われてる、でいいのだろうか。考え過ぎるのも面倒だといつもこの辺りで思考は終わった。

ずるりと寝台の隅に座り、コートを脱ぐ。近場の机に放って置いて布団に潜り込めば、ラモンは「寝るんですか?」なんて聞いた。返事は面倒だと黙る。そこでもう寝ようと瞼は閉じた。だが、サイドランプの明るみに違和感を感じる。仕方無くランプへ手を伸ばすと、俺よりは少し高い体温の指先とかちあった。疑問に思い瞼を開けば薄っすらしかない明かりでも分かる程に顔を赤くしたラモンと視線が合う。

「……あ、の、先生…」

「…………」

「すいません、俺…」

たじろいで何かしらを言い訳しようとするラモン。それを冷めた思考と冷めた視線で見遣り、俺は伸ばしていた指先を布団の中へと戻した。もう寝よう。他人の思考に関与するのは苦手だし、嫌いだ。何も考えたくない。
そうして布団の中に潜り込んだと同時か、俺の掴んでいた布団はばさりと音を立てて剥がされた。そうして足元へ放られたそれをゆるゆると視線で追い、ラモンを見上げる。

「………なんだ」

「………先生…っ」

何をしたいんだ、と質問をしたつもりだった。しかし返答はなく、ラモンは寝台に乗り上げて俺の顔の横へ手を着く。見上げてすぐに位置にあるラモンの顔は、サイドランプに照らされてよく見えた。情けない顔をしている。それから、色欲に塗れた表情。

ああなんだこいつもあいつらと同じか

そんな言葉がぽつりと頭の中に浮かんだ。別にこいつが特別だろうと期待した訳でもなかったが、だがこうして見上げたラモンの表情がセキュリティの奴らの表情に酷似してて、俺は過去の記憶をふつふつと思い浮かべながら内心嘲笑する。
何故こいつなんかを遊星達と比べてしまったんだろう。全く違う。遊星達は少なくとも、俺を愛してくれていたし必要としてくれた。
しかしこいつは違う。ただ俺を性欲処理に使いたいんだ。醜い。本当に醜い。誰もかもが冷めきったこの町で、唯一優しくしてくれる人物だったから、安心していた。こいつは俺の大嫌いな奴らと何も変わらないんだ。
服を脱がす仕種には抵抗しないでやる。もう、どうでもいい。





先生はいつも綺麗だった。この荒れ果てて町並も人の心も退廃した町とは違い、いつも別世界を見遣る様に整然と佇んでいた。
それが俺には美しく見えて、酷くきらびやかであった。手に入れられるのなら何を手放しても惜しくないとすら思う。
彼が少しでも俺に微笑み掛けてくれたのなら、鉱山の主導権等どうでも良いくらいに幸せだ。この胸に先生を掻き抱きたい。好きで好きで、愛している。こんなに人間に執着したのは初めてだった。しかも彼は男で、もう何もかもが異例で、しかしその異例さがまた彼の魅力に拍車を掛けていたのだろう。

今日のこれはたまたまだった。俺は彼に好かれたいとは思ってはいたが、一線越えたい等とは願わなかった。必死彼に尽くし、気に入られようと奮起をする。しかし彼を思い自慰に耽った事や、彼と性行為をしたいとも思わずにいた。何故なら、俺の中の彼はそんな行為に巡り合わせては背徳感を引き起こす程に神聖な存在であったからだ。
死神と呼ばれる彼は文字通り人並み外れていて、人混みでは際立った存在感が剥き出しになる。酷い魅力だった。またそれに強く惹かれるが。とにかく、そんな事柄から俺は彼にそういう行為を持ち掛けるつもりはなかった。

しかしサイドランプを消そうとした先生の細くて冷たくて長い指先に触れたら、そんな事関係なくなっていた。気付いたら押し倒していて、侮蔑の視線を向ける先生を無視し無抵抗なのを良い事に俺は彼を、犯した。



白い背筋は俺が腰を進める度にゆるく震える。ぐちゃりと卑猥な水音がし、彼は押し殺した荒い呼吸を繰り返した。彼の中は俺の吐き出した白濁で満たされており、太股は自ら出した白濁で汚れている。
背後から見下ろす彼はぜいぜいと息をしながら、寝台に俯せていた。しかし腰だけは上がっていて、その姿は俺を欲情させるのには十分である。もう何度も達した自身は焦がれた体を前には関係無く固さを持った。昨晩も娼婦を抱いたばかりであったが、別格である。
細い背筋は今にも壊れそうで、流れる薄い白銀の髪は神秘的だ。やはり背徳感を酷く、しかし現状それは興奮材料にしかならない。

「先生っ…」

「んんっ……ふ、ん…ふっ…」

律動を早めると、ぎりりと強くシーツを握り締めた。頑なに声を出そうとしない姿は健気で、虐めたくなる。ああこれがあの死神だ、皆から恐れられている死神。こんなにも愛らしく体を縮こませて震える青年が、あの死神。そんな死神を蹂躙している事実に更に煽られた。

「……鬼柳、さんっ…」

「んっ………ん、あ……はっ」

握り締められた片手に俺の掌を被せ、身を乗り出して律動を早める。彼はその都度苦しそうに息を詰めるが、だが甘い吐息も混じられている事に思わず口角が上がった。
そのまま片手でさらりと白銀の髪を撫で、横腹を撫でる。びくんと体を震わせ、息を潜めた。
ああ表情が伺いたい。生理的にだろう、真っ赤にまった耳を見て、俺を眉根を寄せる。背後からするのには理由があった。
先生があまりにも侮蔑の視線を俺に向けるからだ。あんなにも幻滅したかのように冷めきった視線を、無気力ながらにされては酷く居心地が悪かった。

ふるふると震えて快楽をやり過ごす先生。健気で愛しい。キスしたい。しかし正面は向かせたくない。複雑だと考えると、ふと興味が沸き、俺は記憶を模索した。
初めて彼に会った時に、彼は簡単に自己紹介をした。その時から既に惹かれていた俺は、簡単に思い出した。彼の下の名を。
普段から先生と呼んでいたが、本当は名を呼んでみたい。とそう思っていたし今も思っている。
律動をゆるゆると止めれば、鬼柳さんは何回も細かい呼吸を繰り返して肩を震わせた。その肩を撫で、耳元へ口先を寄せる。

「………京介」

「っぁ……?」

びくん、と肩を跳ねさせて先生は勢い良く俺を振り返った。とても驚いたような表情で、目元は真っ赤で困惑している。口元からは拭うつもりもないのだろう、唾液が垂れており、顔は普段の血色の悪さからは考えられないくらいに真っ赤に上気していた。その姿に俺は酷く煽られ、まだこちらを向いている先生を気にせず、そのまま勢いよく自身を奥へと捩込む。

「ぁっあぁああ!!!ふ、っあ、ああ…っ!!」

「………京、介っ」

「っや、め…ろ…!!嫌だっ…んっ…ぁあ!!」

ぐぷりと中に出来た気泡が爆ぜる音を聞きながら、俺は何度も耳元で名前を囁きながら律動する。いきなりだからか先生の声は抑えられずに上がった。今までにない程に高く甘い声色は酷く妖艶で、俺はぞわりと強く煽られる。名前を呼ぶ度、嫌々と頭を振る先生の姿は愛らしく、俺は思わず細い首筋に噛み付いた。一つだけ赤い痕を残し、すぐに離す。びくびくと体を震わせる先生の腰を緩く撫で、再び耳元で名前を囁けば、先生は涙声でやめるよう懇願した。

「っ…やだぁッ……らも、っ……ひ、ぁああ…っ!!」

「………京、介っ…京介」

「んっ、ぁああっ…イくっ…ふ、ぁああぁああぁ……!!!」

ぎりりと強くシーツを握り締め、一際高い嬌声を上げて先生は寝台へ突っ伏した。はあはあと荒い息の中吐き出される精液は少なく透明である。その弱々しい様を見下ろして、俺は再び律動を再開させた。ひ、と小さな悲鳴が聞こえたが気にしないでおく。ぎしりと寝台が鳴った。

「……らもっ…も、やら…むりっ…もう…っ」

「……愛、してます…」

「んっ…ん……ぁ、や…だ」

耳元で名前を呼び、髪を撫でる。先生は何度も何度も頭を振り、それを拒絶した。しかし名前を呼ぶ度に先生は過剰反応し、その反応は俺を喜ばせる。自覚はないのだろう。質が悪い。

声も聞こえていないのではという程に虚ろな返事をしながら、先生は俺の律動を受け止めた。きっと愛しているなんて届かないのだろう。酷く胸が痛んだ。




***




ラモン→鬼柳で裏、との事で以上です!ぐだぐだでごめんなさい…!夜中のテンションで頑張ったらよくわかんなくなりました…苦情は受け付けますので…!orz

とりあえずテーマは「ラモンさんに名前を呼ばせようず!」です。うん俺得。この鬼柳さんは遊京とかルド京前提とかですね、名前を呼んでくれた人を思い出して過剰反応しちゃったんです。もう本当に楽しかったです!(^q^(←
あとラモンさんは押し倒さなければ鬼柳さんに中々好印象だったんだよ、って書きたかったんです(^ω^)

ではでは、リクエストありがとうございました!


 






小説置場へ
サイトトップへ


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -