現パロ
京介と狂介
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「狂介、先日保護者会があったのを知っているか?」
「………なに?説教?」
「違う違う、身構えるな」
休日の昼間。馨介と狂介がリビングのテーブルに対面で座って話す様を、京介はソファに座って眺めていた。しかし一応視線はバラエティ番組の再放送に向いている。京介は二人を見はするが、勿論二人は京介の事より話が優先である為、ちらちらと様子を見る京介は気にせず話を続けた。
「その時に、先生に言われたんだ」
「ルドガー先生?」
「ああ」
「なんて」
「お前の成績の事をな」
結局説教なのだろうか。京介はきょとんと様子を眺めていた。
すると馨介は、話題に関係ない京介を見遣り、手招きをする。一旦意味が分からず動きが止まってしまったが、京介は首を傾げながら二人の座るテーブルへ歩み寄った。
「狂介、京介の勉強を見てやってくれないか?」
狂介の成績はいつも可もなく不可もなくの「3」の羅列だった。しかし狂介の取る「3」は頑張った「3」でなく「5」を怠けた「3」であるばかりである。つまり、提出物や欠席や遅刻が少しばかり目立つばかりで本来の知能指数は上々という事だ。
「テスト、80点以上は当たり前ってマジ?」
「はァ?なにそれ、馨介に聞いたのかよ?」
「いいから、教えろって」
京介の部屋に小さなテーブルを置き、そのテーブルを挟んで向かい合って座る。そうして京介が進める勉強を、狂介が反対側で見ていた。
全く進まない手に焦れた狂介は、質問には答えずにぺちりと京介の手を小さく叩く。京介は「わかったやるよ」と口先を尖らせた。
「……それ違う」
「ん?どれ?」
「それだよ今やってる問題」
「え、どこが?」
「どこがも何も、全部だよ全部。消せ、で、ちゃんと問題見て考え直せよ」
とんとんとん。腹立たしそうに指先でペンの先を叩き、狂介はそのまま溜息混じりに仰向けで床に寝そべった。寝てから再び溜息を吐き、憂鬱そうに携帯を開いている。
それを見て京介は流石に面白くないとむくれ始めた。一学年下の弟に勉強を教えられている時点で少し悔しいのに、そんなあからさまに嫌そうな態度を取る事はないだろう。
「…なんで一年のくせに二年のやつわかんだよ」
「あァ?」
「80点以上って、やっぱり本当なんだろ?」
「……ただの応用。教科書見て理解すりゃ、簡単に解ける。京介も出来るよそんなん」
だからやれって、と狂介は仰向けに携帯をいじりながらヒラヒラと手を振った。それを眺め、京介は再び口を尖らす。
何故弟はあんなに出来が良いんだろうか、いいなぁ羨ましい。それのみだ。
元来人へ負の感情を抱かない京介であった為、ふてぶてしい狂介に対して憎しみや怒りなんかはない。素直に再び問題へ取り掛かった。
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