現パロ
磬介初登場
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住所はよく知っていた。彼から来る葉書や手紙を、いつも大切に保管していたからだ。
葉書には何枚も何枚も切手が貼ってある。それはそうだ、日本から外、海外に送るだなんて金が掛かるし手間もかかる。
だが彼は、アイツは、馨介は、季節の変わり目に毎回葉書を来れた。
日常の事、普段の事、京介と狂介の事。自分の事。そして最後には必ずこうだ「いつでも待っているから」と。
昔封筒で届いた馨介達の家の鍵は、大切に取って置いてった。
俺、鬼柳磬介は、白血病で海外にて療養を受けていた。親戚に海外滞在している人が居たので、7歳の時からこっちに来ていた。今は22歳。あの時から数えて15年振りだ。
暫く心配はいらないとなるくらいまで療養は済み、通院は欠かせないながらに俺は日本に帰れる事になった。
別にサプライズという訳でもない。が、ただ、なんとなく馨介事前に知らせる事は止めた。
いや、なんとなくではない。
俺はきっと馨介が嫌いだ。それに今更三人の中に溶け込める自信もない。
だから、家の前まで行って様子を見て帰る事にした。
向かう道中、俺が薬浸けで病に苦しんでいる中で馨介が、双子の兄であった馨介が俺の居ない間にこの手にした鍵の嵌まる家で、京介と狂介と仲良くのうのうと暮らしていたのだと思い、むかむかとする感情が浮かび上がってしまった。
むかむかと、とは少し違う。やり場のない感情に思いがもたつくのだ。
確かに馨介は、俺の居ない間に京介と狂介と笑って暮らしただろう。しかしながら、その反面苦労も沢山あった筈だ。
(……わかってはいるが…気に入らない)
眉根にシワが寄る。
やはり、向かうのは止めよう。親戚の家を訪ねるなりして、身元を定めた上でバイトなりを探そう。それがいい。
何も無理に兄弟達に会わなくたっていいんだ。どうせ俺は、京介と狂介に会ったって「誰?」で終わる存在なのだから。
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