鬼柳三つ子パロディ
出来損ないの狂介君



**



馨介と京介と俺は三つ子だった。よく顔の似た、一卵性の三つ子だった。全員顔が同じだから皆誰が誰なのかいつもわからなくて、俺達三人はそれをよく笑っていた。中学に入ると成績と素行に差が出て来て、成績優秀の真面目といったら馨介、明るい部活の大型ルーキーといったら京介、そして札付き不良の馬鹿といったら俺だった。勿論自分で歩んだ道だから文句はない。けど、才能が上手く開花しなかった俺を突き放して馨介と京介ばかりを愛でていたじゃないかと文句をいうのは許されても良い気がする。結局いう事はなかったが。中学三年の時の事だった。録にきまっていない進路の話をされ、大分遅くなって学校から帰ると嫌な知らせを聞いた。馨介と京介が事故に巻き込まれたのだと。一瞬意味がわからなくて困惑したが、父さんと母さんは顔面蒼白にしながらタクシーで病院に向かうのだと俺に言い、俺は言われた通り制服のままタクシーに乗った。


あまりに大きな事故だったから
一瞬で死んだらしい


苦しまずに死ねたのか、と妙に冷めた思考で考えた気がする。俺はまだ中学生だからと、無惨な有様らしい遺体は見せて貰えなかった。確かにショックだった。実の兄弟、しかも三つ子の兄弟が死んだのだから。だがやはり実感がわかなかった。あの二人が死んだなんて、そんな馬鹿な、なんて。

その日の夜だった。俺は嫌な言葉を聞いてしまったのだ。葬式なんかの手筈はしたからと家には帰って来たものの、父さんも母さんも静かかと思えば口論を始め、不安な状態だった。だから俺は早々と部屋に逃げたのだが、水を飲みたくなってリビングに向かった。そうしたら、聞こえた。


あの子達でなく
狂介が死ねば良かったのに


泣きながら言う母さんの声と、咎めずにそうだなと言う父さんの声。聞いた瞬間居ても立ってもいられなくて、リビングの扉を開こうとしていた掌を握り締めた。そうして俺は、頭が真っ白なそのまま外へ走っていった。もうどこでもいいから行きたい。いっそ死にたかった。


 
 

小説置場へ
サイトトップへ


 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -