現パロ
ルドガーが好きだった馨介
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家の中は相変わらず広くて、広くて。居間から聞こえる男性と女性の声を聞きながら、俺は玄関に靴を丁寧に脱ぎつつも急いで自分の部屋へ急いだ。昼間なのに義父さんは家に居て、義母さんと喧嘩している。いつもはそれに胸を痛めるのだけれど、俺は気にせずに一直線。部屋に入って布団に潜り込んだ。
今日は卒業式だった。高校生活最後の日だった。
卒業式を思い出し、溢れそうになる涙に逆らわずに俺は枕に顔を押し付けて泣く。
今まで一緒に過ごした友人。
卒業式に来てくれなかった義理親。
違うそんな事で悲しい訳ではない。俺は、俺は。
ボロボロと溢れる涙を何回も何回も拭い、仕舞いには息を詰めて枕に鼻先をなすり付けた。
卒業おめでとう。お前なら何処でも通用するだろう。元気でな。
そう笑って俺の頭を撫でた。さようならと言う俺に笑い掛け、そしてすぐには次の生徒に話し掛ける。その大きな背中を見上げ、俺は、ああもうお別れなんだ、と。俺は。
「……っせん…せ」
泣くつもりなんかなかったのに。こんなに泣くとあの時を思い出す。大切な大好きな人との別れは辛いんだなと、そう思うともなく思い、きつく枕を握り締めた。
大好きな人に俺はもう会えません。でも俺は強く生きなきゃいけません。元気で、そう元気でいなくてはなりません。あの人がそう言ったから。
大好きです。いや、大好きでした。もう俺は忘れます貴方の事を。でないと切なくて、死んでしまいそうだ。
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