満足同盟期
クロウ←鬼柳
*
人に好かれたいと願った事がなかった。こう言ってはなんだが、俺は天性のカリスマとやらを持っているらしく、幼い頃から人を引き付ける事の出来る人材であったらしい(見目もあるのかどうかはよくわからないが)。
だから俺の周りにはいつも男女関係なく人が居て、俺の志や挙動はまたそいつらを喜ばせたようであった。無自覚で自分のした事で他人が喜ぶのは嬉しいし、そして俺に人が着いて来てくれるのは嬉しくある。だから俺は自分のしたいように生きて来た。カリスマ性に自惚れて。
クロウと出会ってから俺は変わった。以前はあんなに自由に生きて来たのに、どうだろう。
「クロウ、これ食う?」
「ん。あー」
「じゃんけんで勝ったらやるよー」
小さな紙袋に入ったジャンクフード。受け取ろうとしたクロウの指先でひらりと避けると、クロウは一旦ムッとした顔をした後、勝ち気に笑んだ。ああその顔好き、本当に大好き。ぞくぞくするよクロウマジ愛してる。
「じゃんけーん」
「ほいっ」
「あ。……あーあー…負けちまった…」
俺が出したのはチョキ。クロウはグー。クロウはへへんと笑って俺の手にあった紙袋を取った。あんがとな、そう言ってクロウは余所を向いてそのジャンクフードを食べようとする。
はいこれでクロウとの触れ合いは終了。いつもの流れな。クロウは俺が毎回じゃんけんでチョキを出すのを知ってる。ガキだからきっと癖なんだろうなとか思ってるんだと思う。し、それと俺にその癖を教えはしない。
あーもークロウ本当可愛いよお前。抱きしめたい。
クロウが勝てばクロウは俺の提示した賞品にありつき喜ぶ。俺に勝った事実に喜ぶ。だから俺は勝負を挑む。毎回負ける。
こうしてクロウと時間の共有をしてクロウの機嫌を取る。
愛されたいから。そんだけ。
クロウに愛されたいから、する。
俺は人に愛される為に頭を働かせた事なんてなかった。のに、こうだよ。
遊星もジャックも、なかなかに俺を好いてくれてるとは思う。けどクロウはこう今ひとつな。距離を空ける。だから俺から歩み寄るしかないんだよ。
「クロウ、美味い?」
「ん。まーな」
へへ、とクロウは笑う。それだけで俺はこう…胸が温かいんだよな、うん。クロウ大好き。本当愛してる。
クロウが俺の事好きにならなくてもいい。ただ俺がクロウの視野に入ればいい。
もし疎まれても、仕方ない。だって俺は人に愛されようと努力した事ないから、うん。これがぎこちない行動だなんてわかってるし。
ただ長くでもクロウの視界に入れれば、俺はそれでいい。愛されなくっても。
あー女々しいし暗い。やだやだもうなんでこうなんだよ。クロウにだけだぜ?こんなんなの。もうさマジ…ぁーボキャブラリ貧困でごめんね、本当に心から愛してるよクロウ。
|