現パロでラモンと馨介
事をする手前



*



「なんスかこれ」

ラモンはそう言って、馨介の太股に触れた。馨介の肌は病的に白い。その白い肌は普段日光に晒される機会がなく、また彼は日に焼けると赤くなって終わる体質なのだという。

そんな白い肌の中、一箇所だけ違う場所があったのだ。その箇所のみ、他所と比べると異質である。馨介という彼の性格を知っている者では、こんな物が彼の体にあるとは誰も考えられない筈だ。

「髑髏、ですか?」

「…ああ」

額に弾痕のある顎から灰になって崩れている瞬間の髑髏。悲壮とも楽天とも懺悔とも取れる表情をしたその髑髏は、紫と黒で馨介の左の太股内側に居座っていた。所謂、刺青、タトゥーである。その辺りで売っている簡単に作れるタトゥー、だとかそんな幼稚な作りではない。色素はきちんと縫い込まれていた。

「よくまあこんな大層なモンを…」

ラモンが指先でその箇所に触れれば、上手い刺師に頼んだのだろうか、肌同様の感触をしているのがよく分かる。
ラモンの今まで付き合った女の中には、刺青があった女は沢山いた。悪友に刺青がある者も居た。しかしこんな位置にある人を見たのは初めてである。

「いつ、何故、誰にして貰ったんですか?」

「……言う必要が…ない」

「…そうスね」

恋人、じゃないのか。ラモンはそうぼんやりと考えて、胸が痛んだ。馨介は人と距離を置くクセがある。そうすれば人に嫌われずに済むから。しかし愛されたいからラモンと一線越えた今の彼にそれは少しだけ矛盾している。

「両親が死んで、少しだけ荒れた。誰も…守ってくれなくて」

ぽつり。馨介は言う。それを聞き、ラモンは顔を上げた。
泣きそうな表情で馨介は言う。

「……まだ子供だった」

眉根を潜める馨介は、今にも泣きそうだ。しかし涙は出ない。
ラモンはその様を見て、胸が痛んだ。ああずっと一人で生きてて、この人は要らない強さを身につけたんだな、と。そう考えるとこの成人男性が酷く小さく見える。ラモンが慈しむように下唇にキスすると、馨介は笑った。

「まァ、とりあえず…アンタのんな場所に刺青した奴が羨ましいですね。ぶん殴ってやりてー」

「はは…女だったぞ?」

「マジすか。いやでも羨ましいのは変わらないっすよ」

茶化すラモンに、馨介は楽しそうに笑顔を見せた。



 

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