セキュリティと鬼柳とコカパク・アプ


*


今日のはちょっと酷過ぎるだろ、なんて口の中に広がる血液を吐き下して、痛む全身を丸めた。丸めると体中が痛むが、放っておくと痛み所か感覚すら無くしてしまいそうだから、定期的に動かす方がいい。
極悪人に分類されるらしい俺は、独房から外を見る。ほんの時間だけだけど与えられる自由時間を謳歌する他の囚人を見て、痛む体を撫でた。

肋骨がいってるかもしれないな、なんて嘲笑して、無くならない口の中の血液を地面に吐く。デッキを奪われたのはつい先日、今日は取り返そうと躍起になった結果これだ。大の大人がよってたかって腹を蹴るのは感心しないな。いつのどの場所だろうとセキュリティは最低野郎ばかりだ。

神様、と祈るのを止めたのはいつからだったか。サテライトでデュエルを生き甲斐にした時にはもう神は信じていなかった。神が居たなら、あの頃の俺は両親や暖かい家があった筈だから。
なあ神ってなんだよ。神は誰の為のなんなんだよ。神なんかいない。いるわけがない、いるのならおれをたすけろ。なあ。




青い巨人の描かれたカードを見て、意味もなく絵柄を撫でてからテーブルに置く。話の始まらないダークシグナーの会議には慣れた。暫くそのカードを眺める。地縛神コカパクアプは、俺のカミサマ。俺だけのカミサマ。俺を救ってくれた。
死体にはなったけれど、だけどセキュリティから俺を救ってくれた、正真正銘のカミサマ。

独房で俺に語り掛けたカミサマは偉そうだった。なんでもっと早く救わなかったんだ、なんで死ぬ寸前なんだ、と俺のカミサマに聞くとカミサマは笑っていた。死ぬ寸前でないとつまらない、寸前のもがく様が見たかった、と。流石は俺のカミサマ、頭イッちまってる。



 

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