パロディネタ

病人鬼柳とルドガー


*


こんにちは

すれ違った人に笑い掛ける。ガタイの良い、後ろ髪が長い男性だった。
男性は吃驚したように足を止める。俺も足を止めて、どうしたの、と聞いた。男性は「いや」と苦笑して歩き始める。
俺も気にせず歩いた。

病室からよく抜け出す俺。元気なんだ。自分でもなんで入院してるのかわからないくらい。
男性は手に一杯の花を持っていた。あんな花を貰える患者はいいよな。俺は一人考える。
俺に面会なんて滅多に来ないから。

売店に寄ったり、待合室のテレビ見たりして自分の病室に帰る。
ベッドの上にさっきの花がそこにあって、首を傾げた。何故此処にあるのだろうか。

花にカードが入ってて、手に取って見る。

お大事に 誕生日おめでとう

とだけ書いてあった。誕生日。
誕生日?誕生日なんて来ただろうか。よくわからない。首を傾げた。
だって俺の誕生日って…あれ?誕生日?いつだっけ俺の誕生日。おかしいなわからない。誕生日。誕生日。
誕生日を祝ってもらった事を思い出そうとして、しかし病院に来る前の事がぽっかりと頭から抜けていた。気持ち悪くなってきて、ベッドは目の前なのにその場に座り込んだ。

吐き気がする。頭が痛い。

俺は鬼柳京介、京介。
名前はわかる。けれど主治医や看護師さん知り合いの入院している人以外に呼ばれた記憶がない。なんで病院の記憶しかないんだ?なんで?

ノイズがかった光景が、ぷつりぷつりと脳内で再生される。自分の父親かもわからない人物と仲良く話す男性。それはあの、花を持っていた男性。それから、家が、燃える光景。燃える。燃え盛る。
赤い光が怖くて、何処となく視線を定まらせていた目から涙が溢れた。気持ちが悪い。



 

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