躍如の華




空へと伸びる青い業火。恐ろしいそれは燃え尽きる気配を見せず、俺の前を走るかつての……いや、俺の仲間、鬼柳。その青い炎は彼の俺に対する憎悪全てを表しているようで、俺は純粋に怖いと思い、同時に酷く心が痛む。
その炎を消すべく、俺は赤き龍を呼んだ。青い復讐の炎は消え、鬼柳は俺に負けた。

横転したDホイールの側に倒れている鬼柳。本来ならば傷だって負っているでだろうに、彼はダークシグナーであった為に、頬に土が付いていても傷は一つもなかった。

憎みきれなかった。そう笑う鬼柳。周囲に煌めく輝きは、赤き龍の見せる効果なのだろう。
安らかに笑う鬼柳は煌めきの中に酷く映えて、今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。しかし彼はこれで良いのだと笑った。儚いそれは合図も無く消える。

鬼柳は灰に成って、煌めく宙へと消えた。俺の腕の中には誰もいない。

ただまだそこに鬼柳が居るのだと妙な錯覚が起きて、ただ俺は腕の中を見た。いや鬼柳はいない。鬼柳は、消えた。

仰ぎ見た空には赤き龍が居り、神々しく綺麗に翼を広げて旋回している。ああ綺麗だ。憎たらしい程に。





「遊星?」

とん。肩を叩かれ、俺は仰ぎ見ていたスターダストのソリッドビジョンから視線を下ろす。
そこには困ったようにやんわりと笑う鬼柳が居て、俺は「すまない」と笑って返した。
鬼柳は首を傾げた後、踵を返して歩いて行く。颯爽と歩くその仕種に、長く綺麗な髪と黒いコートが靡いた。俺と十分な距離を取ってから振り返る。
わざわざこちらに来させてしまったのか、と思い眉根を寄せれば、鬼柳は明るい笑顔で俺に手を振った。

「じゃあほら、さっさとトドメをさせよ」

「…ああ、そうさせて貰う」

諦めたように笑って、鬼柳は両腕をこちらに向けた抱き止めるつもりかのように攻撃を待つ。
鬼柳の場にモンスターはいない。伏せカードもない。ついでに手札も勿論ない。手札事故とはいえ大分運が悪いと鬼柳は先程笑っていた。それは俺もそう思う。

ロットンとバーバラが捕まり、この町は平和になった。しかし町に手酷く残った傷痕はとても酷い有様で、この町は復旧作業を続けている。
俺とジャックとクロウはこの町に数日間滞在して手伝う事にした。最初こそ鬼柳は「面倒だろ」やら「やらなくていいぞ?」と俺らに帰るよう促したが、今では根負けしたのか仕事を任せてくれる。

そして今は休憩時間。
あの時の負けが今更になって悔しくなった、と鬼柳はデュエルを挑んで来た。だから俺も甘んじて受け、そして今、沢山のギャラリーの中俺は鬼柳に最後のダイレクトアッタクの命令を下す。

大きな歓声と一緒に、鬼柳がダイレクトアッタクを抱き止める形で受けた姿が見えた。すぐに駆け寄りに行くと同時に、スターダストのソリッドビジョンは消える。

「……ほらお前ら、そろそろ作業に戻れよー」

「鬼柳…!」

「わっ…と…なんだよ遊星」

辺りの奴らに命令を下す鬼柳。目の前に立つとゆるりとこちらを見たので肩を掴み、鬼柳の顔を伺った。すると鬼柳は驚いたように声をあげて、それからすぐに呆れたように笑う。その表情に首を傾げた。鬼柳はぽんぽんと俺の頭を撫でる。

「別に死にやしない」

俺の思考を察したのか、鬼柳はそう言い元気に笑った。その笑顔はまだリーダーであった頃の鬼柳らしい優しくて気取らないそれだったのだが、妙にダークシグナーであった鬼柳の最後と被る。何故だか落ち着かずに、俺は鬼柳を見上げた。鬼柳はそんな俺に首を傾げ、そして心底困ったように笑顔を見せる。

「遊星、そんな顔するなって…」

「……だが、」

「やっぱりお前と、お前のスターダストは強い」

そう言い、鬼柳は俺のデュエルディスクにセットされているスターダストを丁寧に指先で撫でた。視線を下ろしてそれを眺める。

「何度も俺を救ってくれて、ありがとう」

俺に言ったのか、スターダストに言ったのか。いやきっと後者だろう。鬼柳は祈るように瞼を閉じていた。
閑散とした周囲を見回し、俺は鬼柳の頭を撫でる。鬼柳と違い俺は少しばかり腕を伸ばさなくてはならない。しかし鬼柳は気にせずに擽ったそうに笑った。



***



ヴィクティムサンクチュアリにダグナー鬼柳の散り様を重ねてしまい、星屑龍を見るたびに鬼柳を意識してしまう遊星×鬼柳
との事でしたが全くもって素敵設定生かせなくてすいません…!文才なくてごめんなさい…!しかし本当に素敵な設定でのリクエストでうれしかったです…!

ちなみに満足町の方々は遊星が肩掴んだ辺りで気を効かせてさっさと退散しました←

では、リクエストありがとうございました!







小説置場へ
サイトトップへ


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -