ボタン一つでシャットダウン



途中なんか下品だったり、ロットンがキャラ崩壊してたりします。


なんかバンドをする事になった。確かに自分は高校時代はギターをよくいじっていたし、バンドも趣味の一環として組んでいた事もあった。

だが社内でバンドを組まされるなんて意味不明である。

今俺は社内にある会議室にいた。いや正確には俺ら。
いつもならとっくに帰る支度をしている時間だと会議室にある壁掛け時計を見て、それから部屋の隅に設けられたワンセットを見てげんなりとしてしまう。

ドラムにベースにギターにマイク、それにキーボード。機材もセットされていないながら置かれており、今すぐバンドを始められる物が一式揃っている。
此処で練習をしろ、時間は…と説明の書かれた紙がテーブルに置かれていた。

俺の上司である鬼柳さん曰く、これは仕事、らしい。
再来月行われる新入社員の歓迎会。それの出し物としてバンドをする、とは以前から聞いていた。だが誰がするかは知らなかった。どうせバンドが趣味、だとかそういう奴らがやるのだろうだとか考えていたのだが、何故か社長直々のご指名で俺らに決まったのだ。

いまだ下がりっぱなしのテンションで辺りを見回す。

「…ラモン、これはなんだ?」

「……ピックすよ。知らないんですか?」

興味があるのか暇なのか、ギターやベースを二、三歩離れた位置から眺める鬼柳さん。弦に挟まれたピックを指差して言う。ピックはギターやベースの弦を弾くアレだ。最近の小学生でも知っているのではなかろうか。まさか知らないとは…。軽く説明をすると小さくお礼を言われる。
彼は何故だかボーカルに選ばれた。いや確かに声綺麗だけどこの人内気だし、ボーカルとか合わないと思う。まあ正直、仕事以外の時間であの人と一緒に居られるのは嬉しいが…いや違う違う。何を考えているんだ。

緩く頭を振り、そのままドラムに目を移す。

器用にドラムスティックを指先で回す、確か…バーバラという女。俺ら経理課と何かと対立してくる、営業課の奴の一人だ。何が気に食わないのだか知らないが、あの女は何かと鬼柳さんに突っ掛かる。ドラムが上手いとは知らなかった。

そしてその隣には、バーバラ同様に営業課のロットン。彼はベース担当らしい。背が高いのでベースは映えるとは思う。
世辞の上手い性格とやり口から仕事の成績は良いと聞く。しかし彼も何かと経理課を目の敵にするのだ。
いやそれはいい。けれど彼は鬼柳さんに対しての態度があからさまに、経理課に対しての態度と違うのだ。

「ああ馨介、ベース触ってみるか?」

「…え?でも俺、よくわからないから…」

「大丈夫だ、教えてやるよ」

ぎり、と奥歯を噛み締める音が頭の中に響く。
ロットンは、ロットンの野郎は鬼柳さんに馴れ馴れしい。名前を呼び捨てにしやがるし、いやに接近する。腰に手を回したりだとかナチュラルにしやがるし、それに髪にもよく触れる。

バーバラは彼の彼女だと聞くが、嫌な噂によるとロットンはバイだとか聞いた。その噂を聞いたのは、会社のエントランスでいやに接近しているロットンと話している鬼柳さんを見て、ロットンと鬼柳さんて仲良いのかな、なんて考えた後の休憩時間だったので、俺は落ち着かずに立ち上げていたパソコンで大体の意味が分かっている、バイ、という単語をググって見た訳だ。

バイ。バイセクシャルの事。
異性、同性、どちらに対しても性的な欲望をもつ事を指す。また、その人。両性愛者。

という一文を見て血の気が引いた。いや特に、性的な欲望、というくだりで。
あいつは鬼柳さんにそういう感情をもっている?なんだか酷く恐ろしく思えた。
俺だって確かに鬼柳さんが好きだ。女性も好きだし、俺はバイなのかもしれないと以前から考えていた。だが性的な欲望なんて抱いた事はない。ただ鬼柳さんが仕事している様を眺めるのが好きで、あの人が笑ったりすると酷く胸がきゅんとするだけで、そんな対象として見た事なんてなかった。

なのに俺はその日を境に鬼柳さんを、そんな対象として見るようになってしまったのだ。
例えば鬼柳さんが頬を赤らめて身を攀る姿だとか、絶頂を欲して懇願する様だとか、あの綺麗な顔に白濁がぶちまけられた様子だとか、余裕なく息を荒げて俺の名前を呼ぶ声だとか。そういう諸々を想像しては情けなくトイレに篭って、まあ処理を済ませて事故嫌悪したりした。しかも、それでも女性と性行為に縺れ込んだりは普通に出来たのだからとことんである。

これも全部ロットンのせいだ。ロットンが憎い。まるで学生時代の青春をまた謳歌しているような、そんな気分だったというのに。

今現在、ロットンは鬼柳さんにベースを持たせて教えている。その背後から教える体制をやめろ。噛み締めた奥歯が軋む。

止めたいが、あれはロットンが鬼柳さんに教えている、という状況。つまりはロットンが鬼柳さんへ行っている親切なのだ。
止めてしまっては鬼柳さんによく思われないだろう。

見ていられずにふとバーバラに目を移すと、ドラムスティックを強く握り締めて鬼柳さんとロットンを見ていた。殺気立っているのだが……あ、もしかして、だからバーバラは鬼柳さんを異様に嫌うのだろうか。……それなら納得が行く。

「…ロットン、俺はベースが苦手みたいだ」

「そうか?なかなか筋がいいと思うぞ?」

「そ、そうなのか…?」

「ああ。今度また教えてやるよ」

ああほら出たよ出やがったよ得意のお世辞攻撃だぜやだやだ最低だな紳士面しやがって!
苛立つけど、鬼柳さんの嬉しそうな照れ笑いが見れて、正直喜んでいる俺。畜生ありがとうロットン。だが今のいままで急接近していた事は許さん。

「というか練習始めねーの?」

ぐだっとテーブルに突っ伏して呟く。もう疲れた。会議室の椅子はふかふかで良いよな。
言うとバーバラがカランとドラムスティックを置いた。そちらを見ると暇そうに足を組むバーバラが伺える。

「まだ清掃員の娘のコが来てないのよ」

「清掃員の?」

「キーボードのコよ。なんだっけ?ニコだとかそんな名前の」

今日は一応初の顔合わせだ。ただ見慣れた会社内連中ばかりかと思ったが、キーボードは違うらしい。
清掃員の娘ニコ、というと鬼柳さんと仲が良い子だろうか。父親が社内の経理課のあるオフィス担当の清掃員で、たまに顔を出すのだ。そうしてあまり人に心を開かない鬼柳さんは、そのニコという子とよく話している。あの子もバンドのメンバー、という事は鬼柳さん的には過ごし易くていいんじゃないだろうか。……というか社長は本当、どういう基準でメンバーを組ませていやがるんだ。

「まあ適当に話したりしてりゃあいいだろう。一応、残業代出るらしいしな」

ロットンはそう言い、近場にある椅子を手繰り寄せた。どかりと乱暴に座ってそれから近くにあった椅子を鬼柳さんに座るように促して渡す。鬼柳さんは小さく礼を言ってから、すとんと座った。

「そうだな…んじゃ、なんか話すか」

突っ伏していたテーブルに頬杖を着いて言う。話題話題、と脳内で模索してから気付いた。そういえば営業課の奴らと仲良くねぇんだよな。何話せってんだよ。

「………」

「………」

「………」

「………」

うわなんだこの沈黙。こんなんでこれからバンドすんのかよ。
ちらと辺りを伺うが、どうやら皆会話を模索しているようだ。
そうだよな何話せって話だよな。俺だってわかんねーよ。
鬼柳さんは何も考えてなさそうだけど。ああなんかもう前途多難過ぎて嫌だ。

結局ニコちゃんが来るまでなんか気まずい空気だった。こんなんで本当にバンドできるんだろうか。



***



ラモ+ロッ×馨 で以前超短書にて書いてあった「現パロでバンド組むなら」ネタ、とのリクエストでした(^ω^)

なんかもうロットンをバイの人にしたりニコでまず仕舞いだったり下品だったりでさーせんorz
でも会社設定が固まって、ロットンやバーバラも出せたので楽しかったです!

リクエストありがとうございました!







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