微粒子へ謳う



※性的描写有


高校時代の同窓会があると知ったのはつい先日の事だ。あまり他人から郵便物を貰う人物ではないと把握していたので、郵便物の確認はあまりしなかった。だから、同窓会の知らせであるハガキの存在を知ったのは京介が教えてくれたからである。
兄ちゃんの部屋に置いておいたハガキ見た?と聞く京介に首を傾げ返して、弟は呆れたように笑っていた。机の上には確かにハガキがあり、それが同窓会の通知であった。

俺は欠席に一直線に丸をしようとした。何故かというと高校にはそれらしい友人も居なかったからである。確かに、休み時間を共に過ごす奴や体育でペアを組まされれば毎回進んで組んだ奴、異様に仲良くして来る女子も居たが、だが卒業から6年もの間を空けてから会いたいと思い入れる程の相手ではなかった。第一、会いたくなる程思い入れる程の人物ならば今も交流を持っている筈だろう。

とまで考えて、俺は昔の事を思い出した。そうしてとある事を思い出して、酷く胸が痛む。
会ってしまうから行きたくない、しかし会いたい。意味もなく胸元の服を握り締めた。

高校最後のクラスでの同窓会だと言う事だから、つまりこの同窓会にはそのクラスの教師が来るのだろう。パソコンで作られたのか、丁寧なハガキを見て行く。差出人はクラスでも元気だった女子。そうして日時等を見て行くが、あまり細かな事は書いてなかった。

三年間、俺の担任であったルドガー先生。彼は今も教師を務めている。狂介の担任は彼だ。
俺は昔、ルドガー先生に恋をしていた。
あの人が黒板に字を書いて、それをノートに写す。あの人が言葉を発して、俺はそれを聞く。それだけで嬉しくて、同時に辛かった。
愛情は向けるだけでも心が温まるが、だがあちらからも向けられないというのは酷く切ない事だ。
俺のテストの点数を見て微笑み、頭を撫でてくれる。とても嬉しくて、嬉しくて、けれどその度に酷く胸が痛んだ。
ああこの人に愛される事は一生有り得ないんだ。そう思うと、胸を掻きむしりたくなる。あんなに人を好きになったのは、きっとあれが最初で最後だ。もうあんなにも人を好きにはなれないと思う。なのにあの人は教師で、それ以前に男、同性だった。叶う恋の訳がなかったのだ。

同窓会に行けばあの人に会えるかもしれない。しかしあの人に会って自分はどうするのだろうか。
もうあの人への好意はない筈だ。やましい事等なく出席をしたい。しかし、好意がないならどうして興味もない同窓会に出席をする?結局はあの人に会いたいだけだろう。

「……別にいいじゃないか」

会いたいだけでも。別にいいだろう。
話せなくてもいい、一目見るだけ。一目見て、それだけでいい。

かたん、と小さく音を立てて卓上にあるペン立てのペンを一本取る。
出席の文字にぐるりと丸を付けて、小さく嘲笑を漏らした。





久しぶりだな、鬼柳。
馨介君、男前になったねー。
なんだよなんだよ鬼柳、お前今勝ち組だって?
最近不景気だよな、お前の会社どうよ?
鬼柳君って彼女いる?

いきなりの質問攻めに押され気味になってしまう。苦笑しながら適当に応えた。
何十人が居酒屋の座敷スペースを貸し切っており、俺は仕事上遅れて出席した。見覚えのある人物がずらりと居て、俺を見るや手を振ったりと、気にしなかったりと反応は様々。
特に仲の良かった人物は俺に寄り、酒を勧めたり食べ物を勧めたりと話し掛けて来る。
適当にやり過ごして、なるべく隅の方に座った。ぐるりと辺りを見回し、案外近くに目的の人物が居た事に吃驚する。ばくばくと煩い心臓を落ち着かせていると、手前に居る人物が話し掛けて来た。

「鬼柳、久しぶり」

「……あ、ああ。久しぶり」

昔、一番よく仲良くしていた奴だ。俺にメニューを渡して、「なんか頼むか?」と聞く。ああ、と返してメニューを受け取った。

「この後全員揃ったら、一人一人自己紹介と現在の事の説明みたいな事するみたいだぞ」

「…まだ全員揃ってないのか?」

「ああ。良かったなー鬼柳、お前が最後じゃなくってー」

「あはは、そうだな」

人当たりの良い笑顔で言われ、俺も笑って返す。こいつはクラスのムードメーカーで明るくて、よく俺と一緒に居た。懐かしい。
そのまま、自己紹介とやらが始まるまでそいつと話していた。喋り易い雰囲気に合わせて俺も楽しく話せて、たまにちらりとルドガー先生に目を遣る自分は比較的リラックス出来たと思う。


もしかしたら、このままルドガー先生とロクに話せずに帰る事になるのだろうか。なんて考えてから、自分を嘲笑した。もとよりそのつもりだった筈だろう。何を期待していたのやら。


そう考えていたのだが、二次会に突入するという話になってから色々と俺のリラックスはぶち壊された。

明日も仕事があるので、二次会には行かずに帰ろうと思っていた。そうずっと話していたあの同級生に伝えると、「お前帰ったらお前目当ての女帰っちまうだろ」と血気盛んに言われる。俺目当てなんて居るのだろうか。
しかしやはり明日は仕事だから、と食い下がらずに言うと「なら誰にも伝えずに静かに帰ってくれ!お願いだ!」と言われた。彼はずっと恋人が居ないから必死らしい。仕方なく俺は彼以外誰にも伝えずに帰る事にした。
ふらりと店から出て、二次会に向かう皆に隠れながら駐車場に移動する。その時に、会ってしまったのだ。あの人に。


「ああ鬼柳か…帰るのか?」

「………は…い…先生も、ですか?」

ルドガー先生。俺と同じく駐車場の方向に向かっていたらしい。大分聞いていなかったあの落ち着く低音の声と、見上げる高さにある一見恐持てな顔。妙に緊張して、言葉尻が変でないか不安になった。
ルドガー先生は微笑みに近い表情で笑い、それから口を開く。

「明日は朝早くから用事があるからな」

「…そうなんですか………あの、先生も車…ですか?」

話題が途切れてしまいそうで、分かりきっている事を聞いてしまう。ルドガー先生は俺の言葉を聞くと少し考えたようにしてから、後ろ頭を掻いた。昔と一切変わらない癖に心音が早くなる。やはり自分はまだこの人が好きだ。

「いや、近場だからな。酒も入ってしまったし、タクシーで帰るつもりだ」

「……そうですか」

ああ会話が尽きてしまう。泣きそうになって、久しぶりにあった教師に向けなくてはならない笑顔が崩れてしまいそうだ。
左手で着ているコートを握り締める。どうしよう。
俺は卒業式の後に頭が痛くなるまで泣いていた時から何も成長していない。もうこの人に会えないのだと絶望していたあの時から何も。胸が痛い。

「……何か、悩みでもあるのか?」

「……え?」

「…いや、お前は真面目な生徒で相談事の一つもなかったからな…そうも思い詰めた顔をしているのなら、何か悩みがあるのかと思ってな」

思い詰めた。言われ、意味もなく顔に触れる。表情に出してしまったのか。そう考えて、同時に触れていた目尻からボロボロと涙が溢れてしまった。

「……おい…?」

「……す、いません…俺…」

なんで泣いてるんだ。なんで泣いてしまったんだ。必死に涙を止めようと目尻を擦る。と同時に、冷たくて逞しい指にぐいと涙を拭われた。

「俺で良かったら相談に乗るが…」

言われて、ルドガー先生を見上げる。心配そうな表情は見た事のない表情で、意味もなく「あ」と声が漏れた。
馬鹿みたいに煩い心音を宥めて、離れた先生の指を一瞥する。それから漏れかけた嗚咽を堪えて、再び出そうな涙を堪えた。

「……あの、俺…車で先生を家まで送り…ます。だからその途中で話、聞いてくれませんか…?」

「……ああ。…あまり無理はするなよ?」

「……はい」

言ってしまった。さーっと血の気が引く。
昔の俺だったら確実に「大丈夫です」の一点張りでこのまま帰ったろう。なのに俺は少しでも先生と一緒に居たい為に悩みがあるかのように偽った。悪知恵というか、最低な部分が成長している。俺は最低だ。




俺の左側。助手席にルドガー先生。なんという状況だろうか、これは。
ベルトを着用する姿を見て、煩い心音を宥めようと胸元に触れた。やはりばくばくと煩い。
道案内は面倒なので買った時には付いていたカーナビに場所を入れて貰った。
目的地への到着時間を確認する。10分。長いような、いやかなり短い。
カーナビを見ながら車を出して、道路を走り始めてルドガー先生は口を開いた。

「……で、悩みというのは…」

「…………」

悩み。無いです。ごめんなさい先生。俺最低だ。
しかしどうにか話題を作らなくてはいけない。俺は暫し思案する。元来嘘は付けない性格なので、なかなか案は決まらない。

「…弟の事か?」

「…ああ、いえ。…違います。…弟達はいい子達です」

ハンドルを握り締めて、唇を噛む。横に居る先生を一瞥して、まだ煩い心音に眉間のシワを寄せた。

「……好きな人が居るんです」

「……」

「……でも、絶対に相手は俺の事が好きじゃないんです」

震える自分の声色に苦笑して、道案内するカーナビを見た。
俺は何を言っているのだろうか。こんな事を先生に言って、何がしたいのだろうか。先生は暫く黙る。それから、嗜めるように言った。

「…正直、お前から色恋の話が出るとは思わなかったな」

「…そう、ですか?」

「…ああ、無論、悪い訳ではない。安心した」

「……はい」

優しい声色で先生は言う。その言葉はきっと、俺が女性に恋していると思っているから出た言葉なのだろう。俺が好きなのは先生だ。今も昔もずっと。

「相手がお前を好きではない、と決まっているのか?」

「…はい」

「既婚者か何かなのか…?」

「…ああ、いえ…独身です」

カーナビを見て、先生を見る。先生は同窓会の自己紹介時に「まだ独身だ」と言って一同に笑顔を誘っていた。先生は独身だ、だが、相手は女性でなくてはならない。

「…俺はあの人の相手じゃダメなんです。それに俺は、人に愛されるような人間じゃないから…」

「……」

言うと、先生は押し黙った。カーナビには引いた地図にもう目的地のアイコンが見えている。
もうすぐ着いてしまう。

「お前は人から愛される人格をしている」

「……してません」

「何故頭ごなしにそう言う」

「……」

「………告白はしたのか?」

「…してません」

というより、出来ません。
はあ、と溜息を付かれる。嫌味っぽくはないそれに、視線を先生に移した。

「するだけしてみればいい」

「……断られたら?」

「その時はその時だろう」

「……絶対断られます」

「そんな心意気では誰にも断らられるぞ」

真剣な表情で見られ、くるりと視線を前に向けた。心意気なんて関係ない。断られるに決まってる。貴方は俺に告白されたら心意気次第ではOKするのか。違うだろう。
カーナビを見ると、目的地は目の前だと分かった。

「次にその人物に会うのはいつなんだ?」

「……もうあまり機会はないかもしれません」

「……それは尚更、早く告白してしまわなくてはならんだろう」

「………」

そう簡単に言わないで下さい、先生。無意識に眉根が寄る。
なかなか高そうなアパートが見えて来て、「どの辺りですか?」と聞くと、少し奥の方だと促された。

「……鬼柳、お前は自分で思っているよりも良い人格者だ」

「……」

「まあ…告白しろ、とは言い過ぎたが…もう少し、自分に自信を持て」

先生がそう言ったのと、車を止めたのは同時。先生は窓から外を見て、「すまない」と俺に笑い掛けた。

「私ではあまり相談にならなかったな」

「いえ、そんな事はないです」

「…それじゃあ、気をつけて帰れよ」

そう言ってシートベルトに手を掛ける先生の姿を見て、また泣きそうになった。
もう会える機会は無いに等しいんだ。このままずるずると醜くく思いを引きずるより、いっそざっぱりとフられた方がいいんじゃないのか?何が正解なんてわからないけれど、多分自分で決めた事が一番正解の筈だ。

「…先、生…!」

「……どうした?」

シートベルトを外し終えた先生は、俺の思いの外大きく出た声に目を丸くした。心音がばくばくと煩い。

「……あ、の…俺…の好きな、人は…」

先生を見て言うつもりが、視線がずるずると自分の膝に落ちる。先生の相槌が嫌に遠く聞こえて、心音が他の音を掻き消すくらいに煩い。顔が酷く暑い。

「……貴方です」

頭が真っ白。言葉を言い切った唇をきつく閉じて、これでもかと俯いた。心音が壊れてしまうかと錯覚する程に煩い。涙が出そうだ。なんと言って断られるかを想像するのが怖くて、ぎゅと瞼を閉じる。
すると、頭を優しく撫でられた。さらりと髪を撫でて、ぽんぽんと優しく頭を叩く。その動作に困惑して顔を上げると、困ったような表情で笑っている先生が居た。

「…私が好きなのか」

「……ごめん、なさい…」

ぼろりと涙が溢れて、眉根が寄る。そうするとまた頭を撫でられた。先生は身を乗り出して俺を抱きしめる。嗚咽まで溢れて、慰めでしてくれているのだろう先生に甘えて腕を伸ばした。

「……いつからなんだ?」

「……一年の時か、ら…ずっと…」

嗚咽が酷くてあまり言葉にならない。ぎゅうと先生の服にしがみつく。先生の体温は高い。掌は冷たいけれど、体温が温かい。
昔からずっと好きで、言葉にはならない。こんなに接近したのは初めてだ。そう思うと更に辛くて、涙が溢れる。宥めるよう背中をぽんぽんと撫でられた。

「私もだ」

「…………え…」

強く抱きしめられ、それとは逆に縋り付いていた先生の背中から力の抜けた腕が落ちる。
聞いた言葉を意味もなく数回反芻して、それから状況がわからずに困惑した。先生が笑っているのがわかり、更に困惑する。

「ちゃんと言おう。私もお前に好意を抱いていた、お前が一年の時から」

「…………うそ」

「こんな嘘を吐いてどうする」

頭を撫でられ、また涙が溢れる。嘘だ嘘に決まってるそんな訳がない。俺は昔から根暗で明確な志もなくて、特徴なんてなくて、人に好かれる人格じゃなかった。
何も言えずに居ると、先生は俺の頭を引いて自分の胸元に俺の耳元を寄せる。訳が分からずされるままに居ると、俺同様に騒がしい心音が聞こえた。

「告白をされてから年甲斐もなくこうだ。…どうだ、笑えるだろう」

そう苦笑する先生の背中に、行き場のない腕を縋り付かせて抱き着いた。涙が止まらない。どうしよう。嬉しいを通り越して怖いくらいだ。実はこれが夢で、もうすぐ起きるのではないか、とか。
頭を撫でられ、腕を離される。顔を上げると後頭部に手を添えられて引かれた。少し高い位置にある唇に身を乗り出して自分の唇を重ね、溢れる涙を気にせずに先生の首元に縋り付く。
性急に唇が開かれ、舌が歯列をなぞった。ぞわりと背筋が震えて、ん、と鼻に抜けた声が漏れる。そこで唇が離れ、先生は俺の肩口に額を埋めた。

「……馨介、いいか?」

「……あ……え、と…」

名前を呼ばれた事に、顔が熱くなる。次に求められている事を意識して、一瞬頭が白くなった。こくんと頷き、馬鹿みたいに小さい声で「はい」と答えると、ぐしゃりと頭を撫でられた。



先生の部屋はとても綺麗だった。綺麗というよりは、殺風景か。趣味がないのかあまり色のない部屋である。けれど部屋数は数個で、また広い。寝台近くにある本棚は沢山の書物が収められていた。寝台は先生の体格からか大きい。動く度にぎしりとは軋むが、壊れそうなそれではなかった。


「っ…、…ぁ…は…先、生」

「……ルドガー、と呼べ」

「あっ…ん…っは…い……」

胎内に入っている先生の指。最初こそ気持ち悪かったが、前立腺という性感帯を掠めるそれに、今は快楽しかない。
四つん這いになった俺の背中にはルドガーの胸板がくっついている。近い距離のそれは体温を移すし、ルドガーの空いた片手は俺の顔のすぐ横に付かれていた。また耳元にルドガーの顔があり、ルドガーが言葉を発する度にぞわりとした感覚がする。

「っ……ぁあああっ……!んっ…は、っ…」

ずるりとルドガーの指が抜けた。強く前立腺を押し上げるそれは酷く快楽を生み、思わず跳ねた体はそのまま寝台に埋まってしまう。その肩を優しく撫でられ、それから体を起こされた。
俯せていた体を仰向けにされ、正面にルドガーが来るとつい赤面してしまう。先程四つん這いだったのは俺の要望だ。見られていては恥ずかしくて死んでしまいそうだったから。

「…馨介、痛くしてしまったら…すまない」

「……は、い」

頭を撫でられ、思わず笑む。昔からこうされるのが好きだった。心地好くて好きだ。ああ今思えばこの仕種は他の生徒にはあまりしていなかったのかもしれない。気付くのが遅いな。

ぎしりと寝台が鳴り、片足を担がれる。病的に細く白いその自分の足が嫌いだった。その足を肩に置かれ、ルドガーは片手を俺の顔の横に付く。もう片手は腰に添えられ、ルドガーが腰を進めるとぐちゅと卑猥な音を立てて、大分慣らされたそこに先生のそれが入って来た。最初は圧迫感に気持ち悪さが際立ったが、途中から前立腺を押されて、ぞわりと甘い痺れが走る。思わず肩が跳ね、行き場のない手で強くシーツを握り締めた。

「っ、ひ…あぁあ…ッ!!」

「……大丈夫、か?」

「…だ、…いじょうぶ……ッ…ぁあ…っ」

ぐ、と奥まで収められ、全身がぞくりと粟立つ。肩を撫でられ、ルドガーを見上げた。
余裕のなさそうな表情で俺を見下ろしていて、心音がまた煩くなる。俺はこの人が大好きだ。そう意識すると同時に、胸元から腰までに掛けて酷く甘い痺れが走る。

「…っ、先生……ルドガー…早く…動い、て…っ」

は、と息を整えながら腰を揺らした。俺が大丈夫か伺ってくれていたのだろうけれど、意地悪に焦らされているような感覚になってしまう。顔の横に付かれたルドガーの腕を撫でて緩く腰を揺らすと、がくんといきなり動かれた。

「ぁっ…ああッ…!!あ、んッふ、ぁああ…!!」

「……あまりっ…煽るな」

ルドガーのそれが抜けて、挿れられる度にぐちゃりと卑猥な水音が響く。それがまたすごく快楽に助長して、思わずぼろりと生理的な涙が溢れた。
強く腰を捕まれ、早い動きに譫言のように声が出る。揺れる視界で必死にルドガーを見上げると触れるだけのキスをされた。それだけで離れてしまうのが淋しくて、顔の横に付いているルドガーの腕に頬を擦り寄せる。

「くっ、…ふ……るど、が…ぁ!…ぁぁああ…っ……!!」

「……馨、介」

愛しくて愛しくて、涙で滲む視界で見えるルドガーを何度も呼ぶ。その都度強く揺り動ごされて名前を呼び返される。幸せで、気持ち良くて、ぎゅうと手元のシーツを握り締めた。

「ぁあ…っ…イくっ…ゃだ、…る、どがぁ、…っぁああ…っ!」

「っ……ああ、イけ…馨介」

ぞわりと絶頂の見えて来た気持ちの良い感覚に、がたがたと肩が震える。するとルドガーは、腰に添えていた手を俺自身へと移し、握って上下に揺さ振った。いきなりの直接的な快楽に大きく肩が跳ねた。それから前立腺を押し上げる動きで浅く早く律動され、体中が悸く。

「ぁっんああっ…!ルド…ガー…イくっ…イく…――――――…っ!!!」

ぎゅうと痛むくらいにシーツを握り締め、背筋が反った。頭が真っ白になるくらいの快楽に声にならない嬌声を上げる。どくりと白濁は自分の腹に出された。それでもまだ律動は続き、少し遅れてルドガーも俺の中で達した。じわりと胎内で広がる白濁の感覚に身を攀っていると、ルドガーが額にキスをする。

「っ…は、ぁ……ルド…ガー…先生」

「……ルドガーと、呼べ。私はもうお前の教師ではない…」

「ッ……は…い…」

息が荒い。ぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、眼前にあるルドガーの肩に抱き着く。ルドガー、と名前を呼ぶとまた頭を撫でられた。



***



ルド馨で現パロ裏、とのリクエストでした。なんだか煮え切らなくてすいません、苦情受け付けてますorz

ルド→←馨が大好きだったので、書けて大変楽しかったです!
馨介は真面目なので難儀しちゃう子で、ルドガーは真面目な馨介に難儀しちゃう真面目な人です。やはりルド馨はいいなぁ…(^p^)

というかかなり長くなりました…長すぎだわ(^ω^(←←


では、リクエストありがとうございました!







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