貴方がいなくなってどれ程の月日が経っただろうか。
途中で考えることをやめた私にはもう解らないけど、それでもかなりの時が経った。
貴方が私の前から消えてから、貴方の帰りをただ待っていた。
それは、貴方を愛していたから。
復讐者に連れていかれ、私を逃がすために捕らえられた貴方。
復讐者から逃げるとき、私に冷たく言い放った言葉。遅くなったけど気付くことができたよ。
貴方が私を逃がすために、わざと"嫌い"だと言ったこと。
貴方にその言葉を言われて、私はその時気づく事が出来なかった。
悲しみのあまり、ただ泣くことしか出来なかった。
泣いて泣いて、いつしか涙は枯れて。
その言葉が偽りの言葉だと。本当は誰よりも愛されているということを、気付けなかった。
それでも、それに漸く気付いた時。その時、既に遅かった。
「骸くんは僕が殺したよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の中の漸く保っていた何かが壊れた。
骸が白蘭のところにいると聞いて、白蘭の秘書として潜り込んだ。
そして、貴方を捜した結果として解ったのが、貴方の死の知らせ。
マシュマロを指で弄りながら笑顔で骸を殺した、と言う白蘭を殺してやろうとどれ程思ったことか。
それでも、私は殺さなかった。否、殺せなかった。
白蘭がどれ程強いか知っていたから。逆に殺される事が解っていたから。
どうせ死ぬなら、骸に殺されたい。
そう思っていたから、他の男に殺されるなんて耐えられなかった。
枯れたはずの涙を流し、私は貴方の死を悲しんだ。
手に彼の大切な三叉槍を持ち、喉に槍を向ける。
さようなら、愛しい人よ。
もう貴方に会えぬというなら、まだ此処に在り続ける意味がない。
さようなら、白き悪魔よ。
私にとって、貴方ほど恐ろしい悪魔はいませんでした。
「さようなら、骸」
愛しい貴方の名を呼ぶことも、もうないでしょう。
だから、貴方の名を呼べなくなる前に、
涙を枯らして
声を枯らして
貴方の名を口ずさもう。
さようなら、
(愛してるよ、骸)