むずむず


 近所にレンタルビデオ屋ができたので、早速今日、なまえと一緒に借りに行った。少女マンガが原作の青春ものと、少し前に流行ったアクションものと、新作のラブストーリーものだ。
 現在、俺の部屋でなまえとソファに並んで、そのラブストーリーを観てるんだが......さっきから、尻のあたりがむずむずしてしょうがない。原因は言うまでもなく、ラブストーリーによく登場する例のアレだ。

「あ〜、新発売のうなぎ味ポテチもおいしいねぇ」

 さっきからなまえが、かなりわざとらしくパリパリ音をたててポテチを頬張っている。

「お、おう。ファンタとよく合うな!」
「うん、絶妙!」

 パリ、の音の途切れた合間に、テレビからは女優のなまめかしい吐息が聞こえてきた。そして、執拗にディープキスを繰り返す男優。いわゆるラブシーンってやつだ。
 ......あ〜、すっげぇ気まずい。
 こいつらこのままおっ始める気じゃねぇだろうな。だいたいこのテの映画はいつも、ベットインがスムーズすぎる。なんでいつもこんな都合よく事が運ぶんだ。
 すると、隣のなまえが不自然な貧乏ゆすりをはじめた。頬は赤く、目は完全に泳いでいる。
 そういえば昔、家族でこういう映画を観ていた時、必ず誰かが雰囲気に耐えかねてトイレに立ったもんだ。そんで俺は姉貴に「純、鼻の下伸びてる」というむかつく指摘をくらった。
 別に俺たちだって、この程度の行為くらいしたことある。が、こんな風にあからさまに見せつけられたら、かえって変な空気になっちまう。雰囲気に押し流されて「じゃあ俺らも」なんてなったら、万年発情期のようでそれはそれで嫌だ。――という変なプライドが、かろうじて俺の理性を保っていた。
 だが、その時俺は気づいた。なまえが、貧乏ゆすりをしながらも、にじにじとこちらへ距離を詰めていることに。
 それからつんつんと、俺のわき腹を指でつついた。

「......純」

 その顔を見た瞬間、本能的になまえの唇に貪りついた俺は、全然スマートじゃなかったはずだ。
 ふいをつかれたなまえは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに気持ち良さそうに瞼を落とした。あんなにぐだぐだ迷走しておいて結局、映画のやつらと同じことをしてる。
 だーっ、くそっ、発情期のオス犬かよ俺。


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