もうこの島から出て行く、と言ったら、わたしも行きたい、と彼女は言った。お前は連れて行けない、と言ったら、なんでと聞いてきた。聞いてきたから言ったのだ。お前なんて連れて行く価値もないのだと。


「どうしてそんなこと言うの?」


告げた瞬間に涙を溜めてそう言った彼女の瞳を、俺は最後まで見れなかった。もしかしたら、もう一生見れないかもしれないのに、だ。
水平線の彼方へ消えた彼女の面影を、俺はいつまでも甲板の縁で眺めている。

「そんなに恋しいんなら、無理にでも連れてくれば良かったじゃねェか」

ベンが煙草を吹かしながら俺にそう投げ掛けた。そうはいかねェよ、と一言。それしか俺には言えなかった。
あいつが持ってる夢や希望。キラキラと輝く将来の可能性。それを俺が、一海賊の俺が。奪っていい理由なんてどこにもありはしない。

「赤髪なんて名がこんなに重いなんて初めて知った」

そんな囁きは波が拾ってかき消した。この想いを噛み締めたくて、ベンに煙草を1本貰おうと、島があった方角に背を向けた。
あんな最低な別れを告げて、憎い奴と思ってもいいから。どんな気持ちでも俺を一生想っていてほしいなんて。俺はこんなに小さな男だったのか。
最後に見たのは、泣き腫らし疲れた顔をして眠る彼女の姿だった。夢の中でだったら、彼女は俺に連れられてこの広い海原に居るのだろうか、俺は笑顔にさせてやれるのだろうか。
考えたって、仕方のないことなのだけど。

ごめんなさい。様に提出




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