"おかえり。やっと1人だね"
"待ってたんだよ"
"やっと会えるね"
"今行くよ"
『...ッ』
ピーンポーン
玄関のインターホンが鳴った。モニターにはキャップを被ったちょっとふくよかな男。顔は見えない。
ガチャガチャガチャガチャ
『!?』
全身に鳥肌が立つ。手が震えて携帯落とすとその音が聞こえたのか音が止んだ。
ガチャガチャッガチャガチャ
慌てて携帯を手にして座り込み、震える指で電話帳を開く。狙いが定まらずやっとのことで発信ボタンを押した。耳に携帯を当てると何度もなる呼び出し音。
出て...お願い...出て...
《もしもし》
『っ...助けて』
《名前?...どしたん?》
『助けてっ...』
《名前お前どこに居るん!》
『いえ...ドアの外に誰かっ...』
《ええか、俺が行くまで絶対開けたらあかんで!今行くから!》
『うんっ...』
電話が切れても音はやまない。ドアチェーンはしてあるものの、扉1枚の恐怖で壊れるんじゃないかというほど携帯を握りしめた。
しばらくするとサイレンの音が聞こえてきた。それと同時に玄関からの音が止んだ。
サイレンの音が聞こえてから数分後、携帯が鳴る。
《名前?中におる?もう俺しか居らへんから開けて》
扉の向こうから携帯から聞こえてくるのと同じ声がして玄関のドアを開けると目の前の人物に抱きついた。
『亮っ!』
「よかった...遅なってごめんな。怖かったな、もう大丈夫や」
キツく抱きしめられると同時に涙があふれた。
「名前、とりあえず中入ろ。な?」
玄関からリビングに移動すると溢れ出てくる涙を亮の指が拭うと再び腕に包まれた。全身止まらなかった震えはいつの間にか消えている。
『亮...ごめんね』
「何謝ってんねん」
『仕事だったでしょ?』
「帰ってる途中やったから大丈夫。焦ったー。ハンドルに手形着くんやないかと思うくらいやったわ。でも良かった、名前が無事で」
『ありがとう』
「少し落ち着いた?」
『うん』
「さっきの男、警察連れてかれたからもう大丈夫」
『...よかった』
「俺今日泊まってくから。1人で居られへんやろ?」
『うん、ありがとう』
無駄に広いクイーンサイズのベッドに一緒に横になり、それは初めてではないのに何だかドキドキした。キュッと亮のシャツを握るとその手を握られてその温かさが何だか凄く安心してゆっくりと目を閉じた。
手の温もり