INFINITY | ナノ



「へー、そんな人も居るんやな」
『私もまだまだやわ』



名前に『信ちゃん、美味しいご飯にお酒はいかが?』と誘われてやってきたオシャレな和食屋。「肉食いたいな」『たまには違うもん食べ』と言われていろんなおつまみと共にお酒を嗜む。ヤスとマルやったら肉に強制連行やけど、名前には毎度負けてる気がする。始まりは昨日オフやった名前が街で遭遇した話。



『昨日な、オフやって買い物しててん』
「休みなんて久々ちゃうの」
『まぁ半休とかはあったけど。んでな、一応こういう仕事してるわけやし、グサランかけててん』
「おん」
『まぁ、バレるねん。なんで何かわからんけど』
「オーラちゃう」
『オーラ?消してるで』
「お前いつでもバンバンやで。気付いてないか知らんけど」
『嘘やん、消せてると思ってた』
「無理や、グサランかけてもマスクしても名字名前全開」


深く帽子被ってマスクしても、誰かに声をかけられる名前。歩き方とか、立ち振る舞いとか、自分の何気ない所からオーラが出てんねやろなと思う。せやからネットに目撃情報が溢れてて、エゴサーチがてら名字名前で検索をするマルが「名前ちゃん、銀座に居ったやろ」なんて声をかけるのをよう聞く。


『バレるのはまぁ、嬉しいことやねん』
「知ってくれてるって事やからな」
『そう!でも、昨日!』
「なにぃ」
『気づかれんかった』
「それはそれで変装成功やろ」
『違うねん、ナンパされてん』
「なんぱぁ?」
『昨日な、侯くんと買い物行っててんけど、トイレ!言うから待っててん。そしたらな、「お姉さん、暇?」って』
「お前やって分からんかったん?」
『そうやねん、「お姉さん可愛いねー、俺と遊ばない?」って』
「随分古典的なナンパやな」
『人待ってるんでー言うてんのに執拗いから、グラサンとってんな』
「あかんやろ」
『そう思うやん。でもな、私って気付かんかってん。グラサンも帽子も取ってんで。んで侯くん帰ってきて、「何だよ男連れかよ」って』
「ほんまに台本通りやな」
『侯くんのことも知らんかってん』
「俺らもまだまだやな」
『なんか、身に染みたわ』
「もっと頑張れよってことやわ」
『うん、やから悲しいねん。信ちゃんご馳走してくれる?』
「ええよ、ええよ」
『やったー!』


あぁ、名前には甘いなーって自分でも思う。まぁ、仕方ないわ。20年もそうやってきてんねんもん。今更変えられへんわな。露骨なおねだりを受け入れてしまうのも、名前やからやねんな。




まだまだこれから


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