INFINITY | ナノ


冷え性に冬は天敵である。いくら動いても、爪先だけは冷たい末端冷え性の私。毎年「今年の冬は乗り切れる自信がない」とか「去年より寒い死ぬー」とか、お決まりの台詞は今年も健在だ。外では雪がシンシンと降っていて、暖房ガンガンの我が家は安全地帯。今の時代素晴らしく、床暖房は私の爪の先まで温めてくれている。


『あれ、早いやん。おはよう』
「ん、おはよ、何時?」
『10時』


コーヒーを入れた。これから外に出るのが億劫で仕方ない。亮はオフ。今日は1日外にでず、家の中でゆったりまったりの休日を過ごすのだろう。うらやまし。


「暖かくしていかなあかんど、ホンマに凍えるで今日は」
『昨日ホッカイロいっぱい買ってきてん、貼るやつ』
「貼ったるから貸せ」


亮に大量に仕入れてきたホッカイロの箱を渡した時、スマホが音楽を奏でた。ホッカイロを乱暴に開けて私の後ろに立ち、セーターを捲られる。着信は甲斐くんからだった。


『もしもし、』


ホッカイロは、地肌に貼ってはいけない。寒さ対策の為に、セーターの下に着ているインナーの上から貼って欲しいのだ。しかし今はといえば、そのインナーも捲られて素肌が露わになっている。甲斐くんと会話を続けながら、インナーを下ろそうと手を掛けたけど、それは叶わず。セーターとインナーを胸元まで上げられて、その代わりに違うものが私の背中をあたためた。お腹に回っていた手はどんどん上へと登ってくる。ブラジャーの上に手が置かれ、亮の顔は私の首元に埋まっている。「この雪だから、撮影出来ないかもしれない」という甲斐くんの声が電話越しに聞こえたのだろう、手がわさわさと動き始めた。


『私はどうしたらいいの?止んだらやるの?』
「やまんよ、明日も雪やねんから」
〈確かに、止みそうにないな。とりあえず待機〉
「休みでええんちゃう」
〈押してんだよ撮影。俺の独断で決められることじゃないし。まぁ都内だしすぐだから、自宅待機でいいわ〉
『あっ、ちょっと!』


甲斐くんの話が聞こえていた亮は、私の手からスマホをひょんと取り、ソファーに放り投げた。せっかく着たセーターとインナーは次の瞬間にはもう床に落ちていたし、ジーンズのボタンも、ブラジャーのホックも外すのがまぁ上手いこと。ソファはすぐそこなのに、背中がほんのり温かいのは床の上だから。身を放られ、その上に亮が覆いかぶさった。甲斐くんの言葉を聞いてから、まだ数秒の出来事だ。


『エロきど』
「何がやねん」
『甲斐くんの電話勝手に切ったらあかんやん』
「話すことないやろ、待機や言われてんねんから」
『ちょっ、ねぇっ、ベッド』
「そんな暇無い」
『あははっ、ちょっと、擽ったい!』

フローリングの固さが背中に伝わる。そんなことも忘れて体を重ねた。亮がソファに置いてあったタオルケットを引っ張って、2人でくるまった。手が届く距離にソファがあるのに、隣の部屋にはフカフカのベッドがあるのに。今だけはこの床暖房の上が心地いい。素肌で寝転んでいる何とも言えない感覚。少しだけ特別な感じがした。頭の上で着信音が響いたのは、それから30分ほど時間が進んだ頃。やっと起こした体は、やっぱりフローリングからの攻撃を受けていた。





床の温もり
(甲斐くん、動かれへん)
(何で)
(フローリングにやられた)
(は?)


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