INFINITY | ナノ





幸せな時間から帰る時間は早かった。みんなに祝ってもらいながら幸せな時間を過ごしたハワイでの結婚式は、その日みんなで飲み明かして翌日には飛行機に乗らなければいけないというハードスケジュールだった。ハワイという地では"友人"というだけであった人達が、やっぱりトップアイドルであるということだ。仕事の合間に飛んできてくれた信ちゃんは式をしてすぐに空港に向かったし、斗真も映画の撮影があるからと翌朝一番で帰っていった。残りは夕方からゆっくり飛行機に乗って、日本という地についた瞬間から帽子を深くかぶり、すっかりトップアイドル達に戻っていった。

数日後、仕事が終わって食事に誘ってくれた忠義と亮と一緒に移動車に乗った。いつもなら、何を食べに行こうかという相談もあるだろうけど今日は何もなく、送ってくれるという甲斐くんも場所はもうわかっているかのようにどんどんとアクセルを踏んだ。途中でどこに行くのかと尋ねると、「俺さ、行ってみたいところあんねん」と言うだけでなにも教えてくれなかった。

「お前閉まってるやんけ」
「いいから、入って」


車が止まったのは一軒のレストランバーの前で、カーテンも閉まっているし、closeの札も出ている。忠義はそのまま扉を開けてどんどんと中に入っていくから、亮と首をかしげながら後に続くと真っ暗だった。頭の中にははてなくらいしか浮かんでこなくて、躊躇なく中へと入っていく忠義の後を恐る恐る付いて行くと、クラッカーがたくさんなる音と冒頭の声がいたるところから飛んできた。亮に抱き着きながら身を縮めると辺りが明るくなった。テーブルにはたくさんの食事、その周りには見たことのある顔がたくさんいるではないか。クラッカーと共に大きな声を上げたのはきっと目の前にいる松岡昌宏で、その隣にはさっき食事に誘ったのにそそくさと帰っていった忠義以外の関ジャニ∞の面々。そして嵐、TOKIO、キンキ、V6、東山さんマッチさんまでずらりとジャニーズの先輩後輩が勢ぞろいしていた。
隣に居た亮と目を見開きながらフリーズしていると「びっくりしすぎやお前ら」と信ちゃんが腹を抱えて笑っていた。

「名前と錦戸の結婚式行けなかったからさ、滝沢に頼んで集めてもらったんだよ」

と今だ驚いている私と亮にが言った。昌くんが言った。これだけの所属タレントが集まるのは、きっと年末恒例のカウントダウンと、ジャニーさんの誕生日くらいなんじゃないかと思う。タッキー経由だとしても、昌くんの呼びかけなら、それはこれだけのジャニーズが集まるだろう。地方に行っていた人も今日だけは帰ってきたみたいで、お店の外にたくさんの車が停まっていたのも納得だ。

「結婚おめでとう」

と東山さんから大きな花束をいただいた。色んな色がたくさん詰まった花束で、鼻から息を吸えば灰の中まで甘い香りでいっぱいになった。「とりあえず、座って乾杯しましょうか」と昌くんが促せば、マッチさんが乾杯の音頭をとった。

「名前は昔から我が儘だから錦戸も大変だと思うけど、ちゃんと2人で幸せになってくれよ」
とマッチさんが冗談を交えながら祝福してくれた。

「色んな事あると思うけど、ちゃんと力合わせて幸せになって、ね」
と東山さんが声をかけてくれた。

「この度はおめでとうございます」と後輩に丁寧に頭を下げた城島くんと「何かあったらちゃんと連絡しろよ」と言う長瀬くん、そして「お前、名前泣かせたら許さないからな」と涙ぐみながら亮に言った昌くん。

「仕事で来られへんかったけど、光一もおめでとう言うてたで。錦戸、ちゃんと幸せにしたってな」と私の肩を抱きながら言った剛くん。光一くんからは「今日は行けなくてごめん!結婚おめでとう」とメールが入っていた。

「ヒューヒュー!」と冷やかす健くん、「今度うち遊びにおいで」とタレ目を更に垂らした井ノ原くん。「名前、よかったな」と肩を叩いた坂本くん。「今度ご飯でも行こうな、おめでとう」と言ってくれた長野くん。

「結婚式、行けなくてごめんね。写真送ってもらったけど、キレイだったよ」というタッキーに、「めでたいね。ホントに。おめでとう」と城島くんまではいかないけど頭をペコっと下げた翼くん。

「あれからゆっくり休めた?」と気遣ってくれた潤、「翔君に送ってもらって結婚式の写真みたよ」と大ちゃん、「ドレス綺麗だったよ」と和、「ニノが写真写真ってすんげえメールしてくるからさ、腱鞘炎になりかけたからね」と言う翔くん、「おめでとう!俺嬉しい!」と声高らかにした相葉ちゃん。

「錦戸くん、名前さん!おめでとうございます!」と色んな後輩たちが挨拶に来てくれた。

東くんやマッチさんは、私にとっては小さい頃から可愛がってもらっていたお兄さんたちだけど、亮にとったら大先輩で、色んなジャニーズがいるもんだから終始ど緊張していたけれど、みんなから祝福されて照れくさそうな笑顔を見せていた。
結婚おめでとうムードなんて最初だけで、途中からはなんでもないただの飲み会になっていたけど、自分の幸せにみんなが集まってくれるのはすごく嬉しかった。
カウンターにお酒を取りに向かい、グラスを受け取って後ろを振り返ると、この光景はやっぱり異様で。いつもは交わることのない人たちも一緒になっているから面白い。なんだか微笑ましくて、少しだけそれを眺めていた。
信ちゃんは相変わらずマッチさんの隣に座ってゴマすってるし、忠義は潤の隣で大口を開けて笑っていて、章ちゃんはなんだか感性が似ているのか剛くんと周りが騒がしい中しっぽり飲んでるし、マルちゃんは昌くんにモノマネやらされてるし、侯くんは普段でも一緒に居る相葉ちゃんと肩を組んでいるし、すばるはやっぱり良亮の隣に居る。亮はと言えば、長瀬くんの隣で目をグリグリと掻いていた。

それを見て笑っていると、がつがつといつもの歩き方で隣に座った昌くん。グラスを受け取りながら「なんでこんなとこで飲んでんだよ」と貰ったお酒を一気に飲み干した。

『酔っぱらってる癖に一気に飲んだら、また後輩に迷惑かけるで』
「いいんだよ、後輩なんだから」
『昌くん』
「ん?」
『ありがとね。こんな凄い会開いてくれて』
「こんなことなんでもねえよ」
『週刊誌に載っちゃうね』
「いいじゃねえか。おめでたい集まりなんだから」
『ふふっ、うん』
「困ったことあったらいつでも連絡してこいよ」
『うん、ありがとう』
「俺が幸せにしてやれなかった分、ちゃんと幸せんなれよ」
『昌くんはちゃんと幸せくれたで。あの時の私には、持ちきれんくらい』
「俺失敗したか?」
『超ー失敗。こんないい女の逃してんもん。アホ過ぎて飽きれるわ』
「そうだな」

こんな冗談を言えるのはきっと昌くんだから。頭をポンポンと撫でられた時、「主役がそんなとこでなにやってんだよ!」と健ちゃんが手招きをしていた。『早く私のこと吹っ切っていい人捕まえなあかんで』というと、「ばあか。うるせえ」と笑ってくれた。
最後には東くんが号令をかけて解散。中堅若手組は二次会へと向かっていった。

タッキー発案で解散前に撮った写真には、先輩後輩関係なく入り混じったジャニーズの笑顔がばっちり映っていた。


素敵な時間


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