INFINITY | ナノ



「...お前なにしてんねん」
『ぷるんぷるんの半熟目玉焼きに乗せられたベーコンになった気分』
「...何言うてんねんこいつ」
「んふっふふ、」
『塩胡椒ふってー』


ライブ本番まであと1時間と迫った楽屋。衣装に着替えて楽屋に戻ってくると、どこから持ってきたのか人をダメにするというビーズクッションにうつ伏せに乗っかっているうちのお姫様を発見した。ピクリとも動かずに目が半分しか開いていない名前は、トロンとした声で訳の分からない気分を述べた。そんな発言に対して、普通のソファーに座ってギターを鳴らしているすばるはケラケラと笑っとる。


「これどないしてん」
「おとんが名前に持ってきてんて」
「おとん?」
『きょーきてんねーん』


どうやら、お姫様をダメ人間にしているコイツを持ってきたのは、いつもなら滅多に日本におらん名前のおとんが差し入れに持ってきたらしい。
なんちゅう差し入れや。娘がこれから歌って踊って2時間半の大舞台に立とうとしとるのに、気抜けさせてどうすんねん。
どうやら、うちのお姫様はかれこれ30分ほどはこの目玉焼きベーコン状態らしい。今のこの姿をお茶の間に晒したら、きっとファンは半分に減るに違いない。


「お前着替えてへんやんけ」
『んー』
「ヒロが待っとるぞ」
『うごけないんですー』


のべーっとした声でほんまにベーコン状態の名前の頭を叩くと、いたいーと言いながらようやくダランとしていた腕が持ち上がって自分の頭を撫でた。とりあえずこいつに醤油をかけるかソースをかけるのか、はたまた塩胡椒にするか問題はまた考えるとして、そのビーズクッションの下に潰されている俺の雑誌を返してくれないだろうか。


「お前ちょっと、どけ」
『むりー』
「俺の雑誌踏んでんねん」
『目玉焼き食べたら取れるでー』
「卵はいらん、ベーコンは後で食べたるから」
『あん、いやん、信ちゃんのえっち』
「ヒナが言うとエロさ0よな」
『えー、私はいつでも待ってるのに』
「ほんなら、ライブ終わりにでもそのクッション持って一番奥の控室に鍵閉めてまっとけ」
『シャワーあびて待ってる』
「網タイツ脱ぐなよー」
『もー、信五ったらー』
「なあ、それいつまで続く?」
『飽きるまで』
なぁ
「その毎回ある茶番劇俺結構好きやで」
「見せもんちゃうぞ」
「いや、見せもんやろ」


目玉焼きベーコン


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