INFINITY | ナノ


『ねえ信ちゃん』
「なんやねん」
『恋愛って難しいよね』
「なんやねん急に」


仕事が終わって、信ちゃんとご飯を食べに来た。信ちゃんとご飯を食べに行くとなると、大体焼肉になることはわかっているから、いつもの個室へ。テーブルに顎を乗せ、網の上で焼かれているロースをボーっと見ながら言った。


『信ちゃんって彼女居るの?』
「居らんな」
『…そっか』
「なんやねんその間は」
『信ちゃんはさ、彼女と倦怠期とかなったことある?』
「倦怠期?そらあるやろ」


喉を鳴らしながらビールを飲む信ちゃんを、頬杖をつきながらみれば、「なんや」と眉間に皺を寄せられた。


『いい飲みっぷり』
「そらどうも。お前飲まんの?ビール温まってまうやろ」
『うん、飲む』
「おお、ええ飲みっぷりや」
『ん、おいしい』
「で?」
『ん?』
「お前が俺のこと飯誘う時はなんかある時やろ」
『そんなことないよ。今日は信ちゃんとご飯の気分やなーと思って』
「ほら食え」


取り皿には、いつの間にか焼きあがったロースが数枚置かれていて、タレをつけて口に運べばおいしさが口の中に広がる。


『うん、おいしい』
「嘘ついてるとタレ顔に塗りたくるぞ」
『美味しく食べてくれるならええよ』
「おお、網の上乗れ。しっかり焼いたるから」


プクっと頬を膨らませれば、信ちゃんは目を見開いて同じように頬を膨らませた。なんてむかつく顔だろうか。でもそれがおかしくて、吹き出した。


「聞いて欲しくて来たんやろ、俺の気が変わらんうちに早よ言っとけ」
『…亮と喧嘩してんけど、』
「ん、」
『今回は仲直りは難しいかも知らん』
「ん」
『初めてやねん。ずっと一緒に居って倦怠期なんて』
「ん、」
『このまま結婚してええんかなって。まあ、このままやったら結婚もなくなったかも知らんけど』
「ん」
『信ちゃん聞いてる?!』


話してみろと言った割りには、肉を一心不乱に食べる目の前の男。聞いてるのか考えているのか、それとも興味がないのか、網の上にハラミが焼かれた。


「聞いとる聞いとる、で?」
『でって…そのまま飲みに行こうとしてたから』
「ん、」
『そんなことやったら一緒に居られへんよってなって…』
「ん、」
『…結婚発表する前でよかったなって』
「別れたんか」
『別れたんかな…別れようとは言うてへんけど』
「お前はどうしたいねん」
『…』
「別れたいんか」
『…』
「嫌いになったんか」
『…なってない』
「なら何を落ちてんねん」
『え?』
「話もしてへんのに何を落ちてんねんって言うてんねん」
『だって…』
「だって何やねん」
『…どうしたらいいかわからへんねんもん』
「そうやな」
『このままじゃあかんと思ってデートの予定たててん。でも、その気持ちが私にしかないなら、何しても仕方ないんかなって。亮に負担になってるんかなって』
「それが亮の負担になるかどうかなんてアイツが決めることやろ。何も我慢せんと一緒に居る人なんて居らんねん。どんなに仲が良くても、何かしら我慢してんねん」
『…』
「今わかってんのはお前の気持ちだけやろ。喧嘩してから亮の話聞いたんか。お前亮の気持ち聞くの怖くて家にも帰ってへんやろ」
『うん…』
「ちゃんと話して、それでもお互いがあかん言うんやったら、そらお互いの為に別れた方がええわ」
『でも…公表もしてしまってんねんで』
「しかたないやろ。公表したから別れられませんとか、別れたらあかんとかそんな決まりないやろ。いいねん別に、お前らやって人間やねん。どうにでもなるわそんなもん」
『信ちゃん…』
「お前らが別れて誰かがとやかく言うんやったら、俺がなんとでも言うたるわ。謝らなあかんとこがあるなら一緒に頭下げたる。まあ、そうならんように戻ってくれたら1番やけどな」
『うんっ…』
「大丈夫や。亮がどんだけお前のこと好きか。今回はちょっと熱帯びてしまったかもしらんけどな。みんななんだかんだ言うてお前らが仲いいの好きやねん。あかんかったら俺がもらったるわ」
『信ちゃん、』
「なんや」
『好き!』


信ちゃんの横に座って抱き着くと、口に運ぼうとしていたビールが揺れてこぼれる。「ちょっ、お前何してんねん!」という信ちゃんの声も聞かず、腕にグリグリと頭を押し付けた。呆れたようなため息が上から聞こえたけど、もうそれも無視だ。


『信ちゃん、』
「ん?」
『愛してる!』
「亮に言うたれ」
『信ちゃん、結婚しよ!』
「亮に振られたらいつでも来い」
『ああ、もう信ちゃんかっこよすぎ。抱いてくれ』




To consult...
(信ちゃん、)
(なんや)
(とりあえず今日泊めて)
(勝負下着つけてきたか)
(フリフリやで)
(おー、よっしゃよっしゃ、そろそろ帰ろか)
(ゴム買って帰る?)
(アホか)
(あははっ)


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