INFINITY | ナノ





「そんで?」
『そんで、何もなかってん。ほんまやねんで?』
「少しセーブせえよ。結婚すんねやろ、お前」
『そうやけど...』


所は都内某所の焼肉店。信ちゃんにご飯に誘われてきたわけだけど、肉をひっくり返しながらむかいに座る方は眉間に皺を寄せた。


『それって私に友達も遊ぶなって言ってるんやで』
「んー」
『無くなったら私死んでまうよ』


週刊誌の常連になっていることは自分でも認識済みだ。今回は、俳優仲間達と遊んでいるところをネタにされたわけで。今は、楽しそうに笑ってるだとか、くっつき過ぎやとか、亮にイチャモンをつけられて喧嘩をした後だ。そのまま家に帰りたくなくて、忠義はラジオやし、章ちゃんと侯くんは友達とご飯やし、すばると丸ちゃんは大阪やし。途方に暮れたとき、信ちゃんのご飯の誘いはまさに、神降臨。


「友達と遊ぶなとは言われへんしなー。女友達居らんのか」
『景子か...あさみ?』
「あさみ?」
『水川あさみ』
「あぁ、水川あさみな。なんちゅうまたサバサバしたメンツやな」
『サバサバした女の子のが付き合いやすいやろ。ほら、信ちゃんだってこの間付き合ってた子めっちゃサバサバしたタイプやったし』
「いつの話してんねん。1年以上前やろ。その2人と遊んだらええやんか」
『忙しいねん2人とも。2人は大事やけど、私には他に友達も居るの』
「まあそうやな。お前が男友達と遊び歩くんは今に始まったことちゃうしな」
『そうやろ?それ承知で付き合ったんちゃうんかって話やん』
「そらそうやな」


信ちゃんはこうやってちゃんと話を聞いてくれるから本当に助かる。私にとって信ちゃん、侯くん、すばるの年上組は、メンバーだけでなく何でも相談できるお兄ちゃんでもある。


「要は、亮は男とくっついたりひっついたりしてるのを見るのが嫌なわけやろ?」
『くっついたり引っ付いたりなんかしてへんよ』
「しとるやろ、現に撮られてんねんから」


と週刊誌を人差し指でつつきながら言った。信ちゃん麦焼酎をグッと喉に流し込んだグラスを引き寄せると、氷を入れて焼酎と水をマドラーでカランカランとかき混ぜた。


『はい』
「おお、ありがとう。お前相変わらず酒作るの上手いな」
『信ちゃんの丁度いい作り方は覚えてんねん。メンバーのお酒ならプロやで、私』
「お前キャバ嬢でもやれ」
『何言うてんねん。私がキャバ嬢なったら指名全部掻っ攫うNo.1になってまうやろ。他の女の子可愛そうや』
「たいした自信やな」
『つっこんでよ。ボケやんか』
「ほんまにそうなるかも知らんなって納得してもうた」
『そんなこと出来るわけないやんかー』
「で?どうすんねん亮」
『どうするもこうするも、私家出してきたし』
「家出ってお前、あそこはお前の家やろ」
『...そうや。なんで私が家出すんねん。まあええわ。信ちゃん、泊めて』
「俺ん家なんて泊まったらまたうるさいやろ」
『亮が知らん男友達の家行くよりはええやんか』
「お前な、俺かて男やぞ」
『そんなこと言ってー、信ちゃんだけやで。家行って手も繋いだことないの』
「お前らなにしてんねん」
『忠義は普通に抱きついてくるし、章ちゃんは手繋いで寝るし、すばるは普通にお尻触るし、隆ちゃんはさり気なく手握ってくるし』
「横は」
『侯くん?膝枕したり、後ろからギュッてされたり』
「お前らホンマに何してんねん。なんか亮が不憫に思えて来たわ」
『それこそ今に始まったことちゃうやんか。すばるなんかデビュー前からやし、忠義も大っぴらにやるし』
「亮のこと少しは考えたれよ」
『考えてるよー。誰よりも色々してるのは亮やんか』
「アホんだら、そういう事ちゃうやろ」
『んー、難しいな』
「難しいことあるかい。ベタベタせえへんかったらええんやろ」
『うん、じゃあメンバーだけにする』
「まあとりあえずそっからやな、お前は」
『信ちゃんは?』
「なにが」
『悩みとか、愚痴とか。名前ちゃん聞いたるよ』
「ない」
『悩みの一つあるやろ』
「強いて言うなら、ハラミがなかなか来おへんことやな」
『ああ、来てないな。そんなん悩みちゃうやん』
「それ以外はないな」
『ホンマに羨ましい性格しとるわ、アンタ』
「悩んどっても仕方ないやろ。ほら、飲め飲め」
『信ちゃん、ユッケジャンスープ頼んでいい?』
「ええよええよ、好きなもん食べてくれ」
『ごちそうさまでーす』



悩即解決
(信ちゃん、泊めてえや)
(ほんなら今日だけやで)
(もー信ちゃん好きっ!)




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