INFINITY | ナノ


『まーるやーまさーん』
「なーんでーすかー?」
『ご飯でも行かへん?』
「えっ、」
『ああ、あかんかったら大丈夫やで』
「違う違う違う!そうやなくて」
『ん?』


楽屋でのこと。仕事が終わり、帰ろうとしていたところでマフラーを口元までグルグル巻きにした名前ちゃんがぴょこぴょこと寄ってきた。名前ちゃんに誘われて嫌なわけないやんか。行くよ。行きたいよ。久しぶりに誘われたから、びっくりして変な声が出てしまいました。


「いや、名前ちゃんとご飯なんてなかなか久しぶりやから」
『あー、確かに。でもそんな驚く?』
「名前ちゃん誘おうかなーって思うと、絶対誰かと約束あるやん。亮ちゃんは当たり前やろうけど、大倉とかすばるくんとか、裕ちんとか」
『そう?』
「うん」


前は結構誘ってたけど、「今日侯くんとご飯行くねんけど、一緒に行く?」とか、2人で行きたいなと思っても「俺も一緒に行く!」なんて亮ちゃんや大倉の言葉が毎回つくようになってからは、あんまり誘わなくなったかもしれへんな。


『隆ちゃんが誘ってくれたら、忠義の約束なんか断ってこっち来るよ』
「そんなことしたら大倉に僕が殺されます」
「んー?なんか言った?」
「なんも言うてへんよ」
「名前ー」
『ん?』
「今日は温かい鍋のお腹やねんな」
『へー、そうなんや』
「あ、冷たい」


ほら、やっぱり。同じ仕事の時は、他に先約がなければ必ずと言っていいほど名前ちゃんをご飯に誘う大倉。今日も大倉と亮ちゃんと4人でご飯やなー。


「ご飯どこ行く?」
『行かへんよ』
「え?行かへんの?」
『うん』
「なんで?亮ちゃん今日友達とご飯行くんやろ?」
『うん、遅くなるって言ってた』
「ああ、そうなん?」
『うん』
「それなら一緒にご飯食べようやー」
『今日はダメ』
「えー、なんでなん」
『今日は先約があるねん』


え、もしかして名前ちゃん2人でご飯行ってくれるん!?


「えー、誰と行くん」
「隆ちゃん」


それ言ってしまったら大倉くんはついてきますよ、名前さん


「それなら一緒に行こうや、なあ丸」
「え、ああ、うん」
『あかん』
「なんでよ。知ってる人なんやからええやんか一緒でも」
『今日は隆ちゃんと2人でご飯の気分やねん』
「えー、何なんそれー。一緒に行こうや」
『ごめんね、忠義。明日は…野菜いっぱいのお鍋が食べたいねんけど』
「…亮ちゃんは?」
『明日はドラマの撮影やから遅いねんて』
「他は?」
『ゆっくり2人で美味しいお鍋食べたいねんけど、あかん?』
「全然!何鍋がいい?豆乳鍋?キムチ鍋?それともホッとするような優しいお出汁の鍋?あ、いろんなの食べられるのがええよな、よし、調べとくわ!」
『うん、よろしくね』
「丸ちゃん」
「はい」
「おいしいお店連れてったげてな!」
「う、うん」
「よっしゃ、お疲れさーん」
『また明日ねー』


いつもならグイグイ食い下がって意地でも名前ちゃんにくっついていく大倉が、信じられないくらいに簡単に引き下がった。びっくり仰天。


「ええの?」
『何が?』
「大倉」
『明日ちゃんとご飯行くから大丈夫』


大倉の性格を熟知したうえでの断り方や。小悪魔とはまさにこの人のことを言うのかもしれない。


『隆ちゃん』
「ん?」
『今日は、とんかつが食べたいなー』
「とんかつ?揚げ物食べたいなんて珍しいな」
『なんかそんな気分やねん』
「おいしいとこ知ってるで」
『おいしい食べ方も教えてね』
「よっしゃ、任せろ!」


とんかつが食べたいなんて、20年の付き合いで1回も聞いたことがない。もしかしたら、俺が元気がないことに気が付いて、声をかけてくれたのかななんて思った。めんどくさがりに見えて、1番メンバーのことをよく見ている名前ちゃん。みんなが何かあるとこっそり声をかけてあげるのが名前ちゃんだ。


『隆ちゃん』
「何?」
『今日は名前ちゃんの奢りやで』
「あかんよ、それは俺が」
『ええの。隆ちゃんはおいしいとんかつのお店に案内してくれれば』
「ええの?」
『ほら、行くで』


今日はおいしいとんかつを食べながら、ゆっくり愚痴を聞いてもらおう。とんかつのオーダーやけど、名前ちゃんの好きなエビフライが極上においしくて、おいしいお酒が飲めるお店に、誰よりも男前なお嬢をお連れしよう。



おいしい夕食


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