INFINITY | ナノ




『ただいま』

「おかえりー」



仕事が終わって帰宅するとリビングには明かりが灯っていて、今日は私よりも亮のほうが早かったみたいだ。



『もう帰ってたん?』
「うん、夕方には終わった」
『そっか』



ダイニングテーブルにバッグを置くと、リビングにいない亮はどうやらキッチンに居るらしい。覗いてみると、鍋をかき混ぜていた。朝早くから緊迫して張り詰めたシーンの撮影だったからか、その背中を見るとなんだかホッとして、後ろから抱きついた。



「飯食った?」
『んーん、食べてへん』
「冷やし中華食べる?」
『ちょっと食べようかな』
「OK」



男性にしては細い腰に回った私の手をポンポンしながら、麺を茹でる。背中に頭を預けると、亮の匂いでいっぱいになった。ピピピッというタイマー音がキッチンに響くと、鍋の火を止めた。


「ちょっ、くっついてたら危ないで」
『いつも亮はこうやってる』
「そうやった?」
『そうやった』
「できたで。食べるよー」
『お腹空いたー』


亮の背中から顔を出してみると、錦糸卵にハム、きゅうりとシンプルな男の冷やし中華が出来上がっていた。夏だけの限定メニューのお店が多いけど、亮の場合は1年中常連メニューだから、冷やし中華は私が作るよりも亮が作った方が美味しいと思う。


ソファーに座って信ちゃんがマツコさんと夜ふかししているのを亮がコーラを飲みながら見ていた。いつもなら横に座るんだけど、今日は股の間に座ってみた。いつもこんな事しないもんだから一瞬驚いた表情をしていたけど、お腹に手が回ってグッと引き寄せられた。


「なんかあったん?珍しいやん」
『嫌?』
「そんなわけないやん。大歓迎」


首元に亮が顔を埋めると、最近鼻の下に髭を蓄えているもんだから、ちょっとくすぐったい。テレビからはガハガハといつもの笑い声が聞こえてくる。顔をあげた亮の方を向いてみると目が合って、「ん?」と眉をピクッとあげたから、少しだけ首を伸ばして触れそうだった唇をくっつけた。亮の口角が上がると、また触れるだけのキスをした。唇が離れた時にはもうあの笑い声は優しいアナウンサーの声に変わっていて、亮の首にギュッと抱きついた。



「一緒に入る?お風呂」
『うん』
「沸いてるから入ろ」



こういう時、広いお風呂で良かったなと思う。お気に入りの入浴剤を入れて、亮の脚の間に座る。一緒に住んでても、何も他の雑音もなく話が出来る機会はなかなかないもので、ドラマの現場のことや今度発売するアルバムについて、亮の豆知識と話が弾んだ。



「なぁ」
『ん?』
「結婚式どこで挙げる?」
『んー、亮はどこがええの?」
「んー、ハワイは?」
『温かいしいいやん』
「新婚旅行はヨーロッパでも行くか」
『休みとれる?』
「とれ」
『でもさ、まだ誰にも言ってないやん。どうすんの?』
「まずはメンバーと甲斐くんやな」
『ジャニーさんにも言わなあかんし』
「そうやな」
『ねぇ』
「ん?」
『ちゅーして?』
「ん」
『っん』
「やっぱり今日珍しい」
『なんかそんな気分やの。一緒に住んでるから帰ってきて亮が居るの当たり前やけど、それって幸せやなって』
「ふふっ、なんなんそれ。まぁ、俺もやけど」
『俺も?』
「こうやって名前が一緒に居ってくれて幸せ」
『ふふっ』
「なぁ、ベッド行く?」
『連れてって』



それから、タオルをさっと巻いて抱き上げられると、柔軟剤が香るシーツの上へと身体が沈んだ。触れるだけのキスが段々と深くなって、綺麗にメイキングされていたシーツが歪む。「彼女」から「婚約者」に変わってから気持ちが高まっているのか、亮への気持ちが少しばかり大きくなった。唇が離れて笑った顔を見たとき、長年見慣れたこの顔にも思わずキュンとしてしまったのは、秘密。





touch me kiss me


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