「ただいま」
仕事が終わって帰ってくると、玄関先までいい匂いが漂っていて、先に帰宅していた名前が夕飯を作っているんだとわかった。今日はなんやろ、この匂いからして和食かな。
「ただいま」
『...おかえり』
いつもならニコッて笑っておかえりって返事するくせに、今日はこっちも向かんとキッチンに立っていた。
「早かってんな」
『...うん』
「どないしたん?元気ないやん」
『なんでもない』
カウンターからキッチンを覗くけどさっきから目線はずっと手元で、表情ひとつ変えへん。とりあえずソファーに座ってテレビをつけた。
一通り作業を終えたのか、エプロンを外すと飲んでいたビールを持って楽器部屋へと入っていった。いつもなら隣座って一緒にテレビ見るのになんやねん。帰ってきてから1回もこっち見いひんし。時計の針が1周した頃、ガチャッと音がして名前が出てきた。相変わらずソファーに座る俺には目もくれずに愛犬たちにご飯をやってる。キッチンで小さなイスに座りまたビールを飲み始めた。
「もう飲んでんの?」
『悪い?』
「別にええけど、一緒に向こうで飲もうや」
『いいここで』
「なんかあったん」
『なんもない』
「ならお前何で機嫌悪いねん」
『別に悪くない』
「悪いやろ、ブスッとして」
『元々こういう顔です』
「何をイライラしてんねん、生理か」
『違います』
「なんやねん、めんどくさいのぉ。言えや」
『何でもないって言うてるやん』
「なんもなかったらそんな機嫌悪くならへんのとちゃうんかアホ」
『そんな舌巻き付けて言うことなん』
「お前がそんなんやからこっちもイライラするやろ」
『別に私はイライラしてへんし』
「あ?ほんなら何でそんなブツクサれとんねん、俺がお前になんかしたんか」
『別に』
「その別にってやめろや、腹立つ」
『...』
「今のお前と居っても気分悪いわ」
まだ目も合わせずに機嫌が悪い名前にこっちがイライラしてきて寝室にあった上着をとってリビングを出た。
靴を履いて上着を羽織り、玄関の棚の上にある鍵をポケットに入れて扉に手をかけた時、革ジャンの裾がキュッと引っ張られた。
「なんやねん」
『...どこ行くん?』
引っ張られた裾を見てみるとお揃いの指輪が光る手があって、その人物の顔を見れば目を潤ませながら今にも泣きそうな顔で俯いていた。
「どこだってええやろ」
『...いやっ』
「は?」
『...ごめんなさい、行かんといて』
いつもは強気な名前やけど、なんだか今回は目は潤んで以前と見上げられてて、扉の方に身体を向けてた俺の腹に手が回って弱い力で抱きしめられた。そんなんされたら怒ってたのも段々冷めてきて、腹に回っている手を解いて向かい合って腕の中に閉じ込めた。
「何で機嫌悪いねん」
『...映画観てきた』
「映画?」
『仕事終わってから信ちゃんと抱きしめたい観てきてん』
「うん、そんで?」
『嫌やった』
「なにが」
『メリーゴーランド』
「あぁ」
『仕事やし、仕方ないけど相手が親友やからなんか複雑やった』
「...うん」
『平気なフリしてるけど、ホンマは景子だけやなくて他の子もめっちゃ嫌。そんなこと思ってる自分も嫌』
「なんで黙ってたん」
『仕事やもん。やいやい言うたらあかんもん。そんな嫉妬深い女めんどくさいやん』
「めんどいわけないやろアホ」
『アホちゃうもん』
「そんなこと言うたら俺毎回めんどい奴やん」
『めんどいもん』
「しばくぞアホ、嬉しいで」
『え?』
「いつも俺だけなんかなって思っててんで、名前は嫌ちゃうの?って」
『...嫌』
「だから嬉しいで、お互い仕事やからどうしようもないねんけど、また嫌になったらこうやって喧嘩して仲直りすればええんちゃう」
『うん』
「何泣いてんねん」
『やっと言えたから』
指で涙を拭うと、小さく笑って首に手を回してきたからリップ音をたてて唇を合わせた。
『亮、だいすき』
「俺も好きやで」
『一緒にドラマやりたいな』
「ベッタベタの恋愛ものな」
『お腹すいたね』
「その前にベッド行かへん?」
『ごはん食べたらいいよ』
「明日ゆっくりやし、覚悟しとけよ」
『ええよっ』
この日は一緒にごはんを食べて、一緒にお風呂も入って、明日は昼過ぎからやし、愛深めとこ。
jealousy
(10月からまたドラマやろ?)
(うん)
(相手だれ?)
(んー、赤西じ(無理)
(嘘だよ)
ジャニ勉(小原&マック)の元ネタ。リクエストありがとうございました!