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ベンチで本を読んでいたら、突然肩に重みを感じた。
ふわりと香るシャンプーに口元を緩ませてから問う。


「…どうしたの」
「…別に」


いつもより少し低めのトーンで呟いた彼女は、俺の肩に頭を乗せているらしい。
横目で様子を伺うと、伏せた睫毛が目に入った。長い。


「別に、と言う割に何でもないとは言えない感じだけど?」
「………」


そう言うと、彼女は押し黙ってしまった。
あんまり長い事黙っているから、本を閉じて顔を覗き込むと、開かれた瞳と目が合った。


「…ちょっと、」
「ん?」
「肩、貸して欲しかっただけ」


ぶっきらぼうにそう答える彼女の真意を俺は知っている。
寂しい時や甘えたい時、何か辛い事があった時にはいつも、俺の肩に縋って来るんだ。
彼女が何も言わないから、俺はただ黙って肩を貸してあげる。
寄り添う事しか出来ないけど、それが一番、彼女には必要だと知ってるから。


「肩ならいくらでも貸すけど」
「うん」
「肩だけでいいの?」
「…え?」


ふわり、彼女を腕の中に綴じ込める。
耳を真っ赤にした彼女が、こんな事頼んでいないと唇を尖らすけれど、素直じゃない君のために行動を起こしてあげることが、俺から君への何よりもの愛情表現って事で、ここは黙って抱き締められてくれないかな?


「…っ、」
「ね?」



素直じゃないね
(でも、そんな君が愛しいよ)


照れ笑いの君が眩しいや。




20120705






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