short | ナノ
初めて目と目が合った瞬間に、甘い衝撃が体の中を駆け抜けた。
女なんてみんな同じだと思っていたあの頃の俺に、さよならを告げた瞬間。
君に心を奪われて、恋に落ちた瞬間。
「好きだ。」
初めて自分から告げた言葉。
今まで幾度となく他人に告げられて聞き慣れたはずのその言葉は、いざ自分が言うとなると有り得ない程の緊張を伴った。
震える声に情けない気持ちになる。
沈黙が流れる刹那、俺はゴクリと生唾を呑んだ。
「私も、好き。」
程なくして聞こえた返事に心が躍る。
何度も聞いた言葉が、こんなにも幸せになれる言葉だったなんて。
お互いに初めてだらけの恋。
毎日が楽しくて、一緒にいれる事が嬉しくて、幸せだ。
幸せで心が満たされて、温かくなる。
背の高い俺を見上げる丸い目も、小さくて白い手も、少し寝癖で跳ねた前髪だって、君のモノだって思っただけで何もかもが愛しい。
「愛してる。」
心から。
そう、耳元で囁けば、君は顔を真っ赤にして狡いって呟く。
そして必ず、そんな事わかってるよ。って言うから。
だから驚いた君の顔を期待して、今日は敢えて違う言葉を囁こう。
ありったけの愛を込めて
(俺のお嫁さんに、なりませんか)
20120318