short | ナノ




恋なんて知らないまま、青春を過ごしてきた。
周りは初恋がなんだのって浮かれてるときに、私はそれを横目に見て過ごしてきた。
自分には関係のない話。
自分とは無縁の世界。



実は、そう言い聞かせてきただけだった。


本当は私だって、恋をしてキラキラ輝いてみたい。
可愛いあの子みたいに、誰かを想って笑ってみたい。
ああ、でも醜い私には夢のまた夢。

”恋をすれば女の子は綺麗になるよ”

なんて、無責任な言葉があるけれど。
それが当てはまるのは、元がいい子だけなのよ。

醜い女の子が、素敵な王子様に出会って恋をして。
最後に結ばれてハッピーエンドなのは、おどき話の世界だけ。
私は知っている。
それは現実では有り得ないということを。


「…っ」


ああ、胸が痛む。
心がきゅっと締めつけられる。
頬を伝ったのは、冷たい水だった。
雨が降ったんじゃない。
流れたのは私の涙。
ならばこの涙の意味は何?


「ああ…そっか」


大好きな大好きなあの人。
遠くから見つめることしか叶わなかった。
そんな素敵な人の隣には、やっぱり可愛い可愛い女の子。

鏡を手に取り、覗きこむ。
映るのは真っ赤な鼻で泣き顔の私。
ああ、なんて醜いんだろう。
私じゃ到底敵いっこない。



世界は私に微笑まない
(ならばせめて笑っていよう)

大切なのは心の美しさだと、誰かがそう言っていたから。



2014.3.2



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