short | ナノ


憂鬱な雨が降り注ぐ雨の日に、色とりどりの傘を差した君が前から走ってきた。
それは、春一番のような気紛れさで、でも春の陽気のように温かくて。


「雨が嫌いだ」


そう言ったのはいつの日のことだったか。
今なお振り続ける空から滴り落ちる雫が、地面で弾ける。


「ほら、見て!」


憂鬱な僕の気持ちをよそに、君は灰色の空を見上げて、笑顔に花を咲かす。
その刹那、僕の中で弾けたのは雨音なんかじゃない。
体に駆け巡ったのは甘い電流だ。

雨の中、傘を差す君が指さしたその先。
灰色の雲の切れ間から、ちょっぴりだけこちらを伺う太陽。
そんな恥ずかしがり屋の太陽を急かすみたいに、空に架かる虹。


「…綺麗だ、」


思わず呟いたのは僕の心からの言葉。
気付けば雨はどこかへ去り、代わりに顔を覗かした太陽に、君がとびきりの笑顔を向ける。


「雨あがったね!」


きらきら。
雨上がりの空気が太陽に反射して、目を奪われるとはこの事だ。
きゅっ、と目を細めると、君は楽しそうに眩しいの?と聞いてきたけど。
太陽よりも何よりも君が眩しくて。

僕は誰にも打ち明けられないこの気持ちを、太陽に向かって呟くんだ。



恋せずにいられない。
(君の横顔に心奪われたある日。)





Song by THE BOHEMIANS/恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン

20130422



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