short | ナノ




ずっと傍で見てきたから、俺にはわかる。
君にそんな男は相応しくない。


「何かうまくいかないな…」


確かに、君は強い女の子だ。
ちょっとやそっとじゃへこたれないタフさがあるし、泣き事なんて滅多に言わない。
頼りがいがあって、誰からも信頼される姐御肌。
だけどね、俺は知ってる。


「また、別れちゃった」

「そ、か」

「私恋愛に向いてないのかなー」


傷付いた事を俺に悟られまいと、明るい声を出している君。
俺の目には、そんな君が尚更痛々しく映るよ。


「相性悪かっただけだって」

「でも、いつもダメになっちゃうもん」

「相手が悪い」

「またそうやって…」


私を庇ってくれるのは嬉しいけど、私にも非はあるはずだよ?
と、君は不満げに言う。
だけど俺は事実を述べているだけだから。


「"本当は、"」

「ん?」

「"頼られるより頼りたい"」

「……っ、」

「"彼氏にくらい、甘えたい"」

「…な、ん…」

「"でも、弱い私は私じゃないって否定される"」

「…………」

「…図星?」


問い掛けると、うなだれた彼女の頭がこくりと頷いた。


「私、本当は強くない…」

「ん、」

「寂しくなるし泣きたい時もある」

「そうだね」

「彼氏には、私の弱さを理解してもらいたかったのに、"強い私が好きなんだ"って」

「うん、辛かったな」


ぽろぽろと、初めて見た彼女の涙と共に、初めて彼女の口から零れる本音。
よしよし、と背中を撫でている俺の腕の中に納まる君は、ああなんて小さい存在なんだろう。

ひとしきり泣いたあと、彼女は照れたように笑いながら、ありがとうと呟いた。


「何か、いっぱい泣いちゃった」

「良いことだよ」

「でも、よくわかったね、私の思ってること」

「ああ、それはずっと見てたから」

「え?」


きょとん、と目を丸くして俺を見つめる君。
そろそろ打ち明けてもいい頃合いだろ?




「ありのままの君を愛すよ」
(だからそろそろ俺の元へおいで)


差し伸べた手に重なる指が、きっと君の答え。





20130214
HAPPY VALENTINE'S


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