short | ナノ
手に入れたくて仕方なかった。
ずっと、ずっと、遠くから見てるだけじゃ満たされなかった。
近くで触れたい。
俺だけのモノにしたい。
温もりを感じたい。
視線を独り占めしたい。
叶わないってわかってるからこそ、強く抱いてた願い。
それが何故か今、目の前で叶っている。
「…どした?」
ちょっと困ったように眉を下げて笑う貴方が近い。
鼓動が、近くで感じれる。
嬉しくて、すごくすごく嬉しくて、らしくないけど涙が流れた。
黙ってその涙を拭ってくれる優しい貴方に、縋りつきたくなった。
この優しさに、甘えたい。
きつくきつく抱き締めると、貴方はくすっと笑って俺を抱き締めてくれたから、俺は何も考えずに目を綴じた。
溶け合った体温が、心地よくて段々目が霞む。
「どうか、」
これが、
夢じゃなければ、良い。
永遠に続く幻だったら、良い。
微睡みの中で
(温もりがゆっくり、消えていく気がした)
解釈はお好きにどうぞ