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顔を合わせる度に吐く暴言。
あからさまに皺を寄せる眉間。
誰がどう見たって嫌悪を抱いてるとしか思わない行動。


「ねぇ、嫌いになっちゃうよ」


僕がそう呟くと、君は綺麗な顔で笑ってこう答えるんだ。


「何言ってるの?最初から私の事嫌いでしょ?」


図星だから何も言い返せない僕を見て、彼女は満足気に微笑む。
白くて細い指が、僕の前髪を梳くのを、僕は黙って見てるだけ。

その指が嫌いだ。
茶色い瞳も、真っ黒で艶やかな髪も嫌い。
真っ赤な唇も、白い肌も、少しハスキーな声も。
君に関わるモノは全部、キライ。


「いいのそれで。」


その笑顔も、


「私は、私の事を嫌いな君が好きだから。」


キライ。


「だいっきらい」

「知ってる」

「僕の悪口は本当に悪口だぞ」

「私の悪口は愛情表現だよ」

「…気持ち悪い」

「そうかもね」


僕に何を言われても動じない彼女に、少しだけ腹が立つ。
涼しげな表情を崩す瞬間があるのかを知りたい。
そう思ったのは純粋なる興味。


「…ねぇ、」

「何?」

「好き、」


言い切らない内に言葉を遮られたのは、彼女の平手打ちのせい。
予想もしなかった出来事に、僕は呆気に取られた。
視界には、肩を怒らせる彼女が映る。
静かに、静かに。
彼女は呟いた。


「嘘吐き」

「…え」

「好きじゃないくせに。」

「……」


確かに、僕が君の事を好きじゃないのは事実だ。
だけど、君は好きな男に好かれたくないの?
遠ざかる背中を見つめながら呟いた。



私を嫌いな君が好き
(歪んでるかな、それでも私は君が好きだよ)



本当に好きになったって言ったら、彼女は僕の事を嫌うのだろうか。



20130116


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