short | ナノ
あなたが愛した世界が憎いと言ったら、あなたはどんな顔をするのかしら。
いつもみたいに大きな口を開けて、太陽のような笑顔で笑うのかしら。
そしてきっとこう言うのね。
「まっこと、おまんは嫉妬深い女ぜよ」
誰が私をそんな女にしたの。
可愛げなんて欠片もないわね、そんなのは百も承知なのよ。
あなたがこの世を動かす人だとも知ってる。
それでも、もしあなたを私の元に繋ぎ止める術があるのなら。
私はあなたをきっと、きっと。
手放しやしないのに。
「俺は必ずおまんの元へ戻るぜよ。」
道に迷わんように、おまんが明かりを灯して俺を待っとってくれ。
帰り道を知らせてくれ。
「愛しとるよ…おりょう」
「……私も、」
ねぇ、やっぱり思うのよ。
何とかして引き止めれば良かったと。
後悔しているのよ、ねぇ、ねぇ、龍馬さん。
あの笑顔が見たいだけなの。
声を一声、聞きたい。
優しく名前を呼んでほしい。
あなたの温もりに包まれたい。
それだけなの。
たった、それだけなの。
ああ、やっぱり。
あなたを奪っていったこの世界が憎いわ。
(あなたが遺してくれた文を読んでも、あなたの声が聞こえないなんて。)
嗚呼、憎らしい。
20130103