その他 | ナノ


※ 黒子のバスケ


僕の彼女は少し変なところがあります。…いや、少しというよりかなりと言った方が正しいでしょうか?とにかく、僕の彼女は他の人の彼女は違うところがいくつかあります。そんな彼女と僕。出会いはあまりにも突然で、印象的でした。
彼女との出会いは、僕が帝光にいたころです。僕がキセキの世代のみんなと同じ一軍に入って、しばらくたって黄瀬くんが入ってきたころに彼女と出会った。
彼女は最初、黄瀬くんのファンとして放課後の部活を見にきていました。…いや、正確には僕が勝手に彼女のことを黄瀬くんのファンだと思っていた。それは、彼女がいつも黄瀬くんのファンの子たちと一緒にいたし、彼女もいつも黄瀬くんを見ていたがら。

彼女の名前は名字名前。クラスは僕と一緒で、しかも隣の席。窓際の一番後ろに僕たちはいる。いつも窓側にいる彼女の髪が窓から吹く風になびくたびに、フウッと僕の前を彼女の甘いシャンプーの香りがすぎていった。名前さんの身長は女子の中では高い方で、彼女が先生に指名されて板書している姿は綺麗だった。スラッとした身長に、少し短いスカートから見える足。陸上部だから、足に筋肉がついていて嫌だと彼女は言っているけど、僕はそうは思わない。僕が少し力を入れれば、彼女の足は簡単に折れてしまいそうだった。そんな彼女と僕の関係を、今日は少しだけ紹介したいと思います。

「テツくん!」
「名前さん」
「あ、あのね?今日のお昼一緒に屋上で食べよ?」
「いいですよ。少し遅れて行くかもしれませんが」
「うん!待ってる」

「じゃあ、またあとで!」と言って、パタパタと走って行く名前さん。そうやって、普通にしていれば可愛いんですが…。最初に言った通り、僕の彼女は変…いや、おかしいです。教室に入ると、ニコニコと座っている僕の彼女。…今日は、ご機嫌ですね。何か良いことでもあったんでしょうか?
そう思いながら、僕は名前さんの隣に座る。そうすると、あの楽しそうな笑顔で僕を見つめてくる。…人よりも影が薄く、なかなか人に気づいてもらえない僕を、彼女はこうしてすぐに見つけてくれる。バスケでの僕の光が青峰くんならば、彼女は日常生活での僕の光だ。

昼休みになって僕は赤司君に頼まれていた用事を済ませてから彼女の元へ向かう。屋上の扉を開けると、いつもの場所に彼女はいた。フェンスにもたれかかっている。いつもなら、僕が来ると笑顔で手を振るんですが…。少し不審に思ってゆっくり彼女に近づいてみると、思った通り。彼女はスヤスヤと寝息をたてていた。…今は僕が傍にいるからいいんですけど、危機感というものを持ってほしいですね。彼女の肩を揺すりながら、名前を呼ぶ。すると、彼女の長いまつげがピクリと動いて目が開く。

「おはようございます」
「ん、おはよう。テツくん」
「こんなところで寝たらダメですよ」
「え?」

「名前さんはもう少し危機感を持って下さい」
「…もしかして、怒ってる?」
「……そういうわけじゃなくって、」
「…〜ってもいいよ」
「え?」
「殴ってもいいよ!」
「………はぁ」

キラキラと輝いた笑顔。その顔に似合わない彼女の発言。どこを探したら、彼氏に殴ってもいいと言う彼女がいるのでしょうか。そう、これが彼女のおかしなところ。どうやら彼女は、僕に罵ってもらいたいらしい。今みたいに、殴ってほしいとか、怒鳴ってほしいとか、蔑んでほしいとか…。
どうして彼女が僕にこんなことをお願いするのかというと、彼女が黄瀬君のファンの人と一緒にたまたま部活を見にきたときに、黄瀬くんの教育係をしていた僕を見つけたらしい。…キセキの世代以外の人で、こうも簡単に僕を見つけてくれた人は初めてだったので少し驚きました。そして、黄瀬君に指導している僕を見て一目惚れ…したらしいです。別に、僕は黄瀬くんを罵っていたわけではないんですが…。まぁ、ときどき青峰君に黄瀬君の扱いが雑だとは言われますが…。

「…殴ってくれないの?」
「…殴りませんよ」
「………。」
「…はぁ。名前、早く食べないと授業に遅れる」
「!?」

そう言うと彼女は嬉しそうにお弁当を開ける。こうやって僕が名前さんのことを名前と呼ぶと、彼女は喜ぶ。あと、最近気づいたのは敬語をはずすと効果が倍になること。…あまり慣れないので、使いたくないのですが…。まぁ、こうして彼女が喜んでくれるので悪い気はしません。

こうやって彼女と隣に並んでお弁当を食べる時間が僕は好きです。ちょっと他の人とは違うところがあっても、そんなところも含めて僕は彼女が好きなんだと思います。確かに最初のころは驚きましたが、今ではもう慣れました。彼女を殴ることは絶対に出来ませんが、少しいつもより雑に彼女の頭を撫でることは出来ます。それで喜ぶ彼女の気持ちはやはり理解出来ません。それでも、僕が何かをすることで彼女が笑顔になってくれることが僕は嬉しいです。

「テツくん!なんか罵って!」
「…青峰君に頼んで下さい」
「青峰だとなんか違うの!テツくんじゃないとダメ!」
「………。」

こうやって彼女に僕じゃないとダメって言わせている僕は、最低でしょうか?こうしないと彼女の気持ちが確かめられないなんて…でも、彼女がこうして僕を求めてくれるから、僕は彼女の傍にいることが出来る。彼女という光の影に僕はなれる。「バカ女」と呟くと、彼女は顔を真っ赤にして黙ってしまった。…照れることだったのでしょうか?やっぱり、僕の彼女は少し変です。







--------------------------------

12/09/08


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -