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※ 黒子のバスケ


「大ちゃーん!」
「はいはい」

廊下の端から走ってくる俺のもう一人幼なじみ。俺とさつきと名前は小さい頃から、ずっと三人で一緒だった。ただ、こいつだけは小中一貫校のお嬢様学校に通っていた。おかげで、こいつは男に免疫がない。今みたいに平気で俺に抱きついてくる。…ったく、高校生だってこと考えろよな。

「だから離れろって言ってんだろ!」
「え?何で?」
「あー…つーか、さつきは?」
「さっちゃんは先生に呼ばれたー」

…さっきから、腕に胸が当たってる。俺だからいいものを、他の男にまでやってたらどうなるか知らねーぞ。昔から俺はこいつの兄貴みてーな存在で、それ以上にもそれ以下にも見られたことはねぇ。

「さっきねー今吉先輩が、」
「あん?」
「今度一緒に出かけようって誘ってくれたんだー」

オイオイ!あの眼鏡何やってんだよ!絶対名前のことからかって遊んでいるだけじゃねーか。つーか、こいつもこいつで何うれしそうにしてんだよ!あん?てか、何で俺がこんなに気にしなくちゃいけねーんだよ。よく分かんねーけど、胸くそわりぃ。

「何着て行こっかなー。ねぇ、一緒に選んでよ!」
「俺には関係ねーだろが」
「えーじゃあ、良くんに頼もうかなー」
「なんでそこで良が出てくんだよ」
「え?友達だから?」

友達だから?じゃねーよ!お前には危機感っつーもんがないのかよ!…面倒くせぇ。なんで俺がこんなにこいつの心配しなくちゃいけねーんだよ。よっし、もうどうでもいい。こいつの勝手にすればいい。

「ねー大ちゃん」
「なんだよ」
「手、離して?良くんのとこ行くから」

気がつかないうちに、俺はこいつの手を握っていた。悪ぃって言って手を話したら、名前は走って行ってしまった。なんなんだよ、あいつ。さっきからイライラが収まらねぇ。…バスケでもしに行くか。





xox





「あ、青峰くん!」
「あん?」
「ヒイッ!スイマセンッ!」
「良じゃねーか」

体育館に行くと良がいた。昼休みだから、誰かいるとは思ってたけどよー…こいつだったとは…。さっきの名前との話のせいで余計にイライラする。つーか、あいつはこいつに会いに行ったんじゃなかったのかよ。

「あの、ボク青峰くんに聞きたいことが…」
「なんだよ」
「名字さんとはどういう関係なのかと…」
「名前と…?ただの幼なじみだぜ?」
「本当ですか?」

なんだよこいつ。名前と俺はガキの頃からずっと一緒で、そんでこれからも…あ?これからもっつっても、あいつも俺も高校生じゃねーか。ずっと一緒にいられるわけがない。いつかは離れていく。…幼なじみっつったそんなもんじゃねーか。なんだァ?なんでこんなにイラつくんだ?

「青峰くんがただの幼なじみって言うなら、ボクに彼女譲ってくれませんか?」
「…は?」

俺のことを真っ直ぐ見つめて意味の分かんねぇことを言い出す良。つーか、こいつキャラ変わってんじゃねーか。いつもはヘコヘコ謝っているくせになんだよ。譲るも何も、あいつは俺のもんじゃねーし。…だが、こう言われると気にくわねぇ。チッ。なんなんだよ、どいつもこいつも。ただ分かることは、こいつに名前を譲るのはなんでか分かんねーけど、嫌だ。

「渡さねーよ」
「え?」
「なんでか分かんねーけど、テメェにあいつは渡さねぇ!分かったか?」
「ス、スミマセンッ!」
「…チッ」

バスケする気が萎えて体育館から出る。もう考えるのも面倒くせぇ。こうなったのも全部、名前のせいだ。他の男があいつと関わっているのを聞くだけで、イラつく。クッソ、どこに行きやがったんだァ?

名前を探し回って、やっと辿り着いた屋上に名前はいた。

「何してんだよ」
「…大ちゃん」
「あん?なんで泣いてんだよ」
「こ、これは…」

慌てて袖口でまぶたをこする名前。なんで泣いてんだよ…。誰かに泣かされたのかァ?まだまぶたをこすり続けているこいつの頭を撫でた。昔から、こいつが泣いているときはよくこうしてやった。もう一人の幼なじみのさつきにはない感情が、こいつに対してあることは分かっていた。だけど、それがなんなのかは分かんねぇ。

「だ、大ちゃんのせいだもん…」
「はぁ?」
「…〜っ!大ちゃんの鈍感!」
「さっきからなんだよっ…て、は?」

いきなり叫びだしたかと思えば、正面から思いっきり抱きついてきた。ったく、意味わかんねーよ。泣いたり、怒ったり…こうやって抱きついてきたり。こいつの考えていることが全然分かんねー。

「離れろよ」
「いやだ!」
「離れろって」
「…いや」

はぁ。どうすることも出来なくて、ため息をつく。つーか、こんなこと他の男にもしてたらただじゃおかねぇからな。幼なじみ…幼なじみだから、俺はこうしてこいつの傍にいれる。幼なじみだから、こいつはこうして俺を慕ってくれる。全部、全部、幼なじみだからー…。

「大ちゃんは、あたしのこと嫌い?」
「なんでだよ」
「あたしは…大ちゃんが好き。幼なじみとしてじゃなくて、男の人として」
「…は?」

今、こいつ何て言った?幼なじみとしてじゃなく?…あーもう考えるのはやめだ。今こうして、こいつのことを抱きしめ返したのが答えなんだろうな。今まで気づかなかった。いや、知ろうとしなかった。俺も、こいつのことが好きだったんだな。

「…俺も、好きだ」

昼休み終了のチャイムが流れる中、俺たちはただただお互いのことを強く抱きしめていた。







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12/07/13


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