Starry☆Sky | ナノ
「夏祭り…」

蝉の声が少しずつ減っていった八月の終わり。星月学園の掲示板には、夏祭りを知らせるチラシが掲示されていた。夏祭り、かぁ…。去年は月子と哉太と錫也と、あと夏休みの間だけ学園に帰って来た羊と一緒に行った。懐かしいな…。あのときに見上げた夏の夜空に大輪に咲いた花火を今でも鮮明に思い出すことが出来る。今年もその夏祭りがやってきた。…きっと、今年は二人で行くことになるのかな?

「夏祭り?」
「うん。去年みんなで一緒に行ったでしょ?だけど、今年は…」
「べ、別に俺はお前と二人でいい」
「ありがとう、哉太」

去年の冬くらいから哉太と付き合うことになった。告白はあたしからした。だって、哉太はヘタレだもん。月子や錫也に協力してもらったのが懐かしい。こうやって暑い夏でも放課後は二人で手を繋いで帰る。月子に「ラブラブでよかったね」って言われて、しばらく顔のにやけが取れなくなるほど嬉しかったのは哉太には内緒。

哉太とあたしは夏祭りを一緒に行く約束をして別れた。さっきまで一緒にいたのに、別れた途端に急に寂しくなる。会いたいな、って思ってしまう。…哉太は寂しくないのかな?あたしはいつだって哉太の隣にいたい。だけど、哉太はあまりそういうことを言わない。照れてるだけだって分かってる。そんな哉太が好き。だけど、たまには言葉にして伝えてほしいな…。
さっきまで繋いでいた手を見つめる。哉太の手は喧嘩ばっかりしているせいか、ごつごつしていて所々に傷がある。だけど、あたしはそんな哉太の手が好きだった。初めて手を繋いだとき、あたしは哉太のことを好きになってよかったって思った。こみあげてくる愛しさが逃げてしまわないように、哉太の手を強く握ったことを覚えている。…こんな風に思っているあたしを哉太はどう思うかな?そんなことを考えながら、寮へ戻った。





xox





「よう」
「お待たせ。哉太、浴衣すごく似合うね」
「錫也に着せてもらったんだ。…お、お前も浴衣…」
「ん?なんて言ったの?」
「…馬子にも衣装だなって言ったんだ!」
「…はいはい」

哉太ってやっぱりオシャレに気をつかうタイプだよね。多分、今日哉太が身につけているアクセサリーは浴衣専用のかな?初めてみるし。自然と繋がれた手に思わず笑みが零れてしまう。そのまま、二人で夏祭りの会場へ向かった。

「あ!哉太、りんご飴!」
「お!こっちには焼きそばもあるぞ!」

名前と来た夏祭り。そういえば、こいつと二人で初めて来た夏祭り…だな。りんご飴を見つけてはしゃぐ名前。そんなに可愛い顔で笑うなよな!周りの男共が見てんじゃねーか!ただでさえ浴衣を着ているせいでいつもより可愛い…って、俺は何を考えてるんだ!?名前に気づかれないように、周りの男共を睨みつける。まったく、こいつは俺のもんだ。そんな俺の心配にまったく気づかない名前は目当ての屋台を見つけては俺の手をぐいぐい引っ張って行く。

「哉太、もうすぐ花火の時間だよ」
「去年と同じ場所で見るか?」
「うん!」

去年夏祭りに来たときにはまだ名前と付き合っていなかった。…俺は、名前のことがそのころから好きだったけどな。あの日から名前への想いは止まることを知らない。いろんなこいつを知っていくたびに、どんどん好きになっていく。会うたびに、どんどん好きなっていく。そして、会うたびに、俺は我が儘になっていく。まだ一緒にいたい、何かをするわけじゃなくって、ただただ名前には隣にいてほしい。俺は言葉にするのが苦手だ。だけど名前は「哉太の気持ちは目を見れば分かるよ」と言って俺を見つめた。だけどよ、俺だって頑張ればお前に気持ちを伝えられる。なぁ、名前のことすっげー好きだ。

「始まった!」
「お、たーまやー!!」
「…綺麗」

思わず見とれてしまう数々の花火。あたしも哉太もその花火を黙って見上げていた。チラッと横にいる哉太の顔を見る。赤・青・黄色の花火が哉太の横顔に映る。涼しい夜風が哉太の髪を揺らしていく。パッと咲いて、シュンと散る花火は、まるで恋の炎みたい。こんな風に綺麗にあたしの心が哉太に見えればいいのに…。切なく零れていく火の粉。見ているだけで胸が熱くなる。

「…哉太」
「どうした?」
「…好き」
「!?」

あたしはきっと幸せなんだと思う。だけど、それでも少し悲しくなってしまう。哉太のことを好きになりすぎて…この恋が、この花火や夏のように消えてしまう気がして悲しくなる。好きになれば、好きになるほど別れが怖くなる。会いたい…ただ、いつでも会いたい。一緒にいるときは安心してそんなことを思わなくてすむから。

「…名前」
「?」
「俺も、お前のこと好きだから」
「え…」
「…つーか、好きすぎて困る」

哉太の顔が赤いのは、赤色の花火に照らされたからじゃないよね?きっと、今のが哉太が言葉に出来る精一杯の気持ち。目頭が少しだけ熱くなかった。…別れなんて考えている暇があったら、あたしは哉太のことを精一杯愛そう。ギュッと哉太に抱きつくと、哉太はあたしの背中に腕を回した。

「哉太、」
「なんだよ」
「哉太、顔真っ赤」
「うるせー!見るな」
「でも…」
「?」
「嬉しかった」

未来がどうなるかは分からない。それでも、一緒にいれる今を大切にしたい。夜に打ち上げられた花火は、まるで恋花火。そう思いながら、あたしは哉太の胸板におでこをくっつけた。







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song:三代目J Soul Brothers/花火

12/09/18
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