Starry☆Sky | ナノ
※ 翼生誕記念


小さい頃から、友達にサプライズをするのが好きだった。前々から準備をして、当日にびっくりさせて、そして喜ぶ友達の顔を見るのがすごく好き。サプライズに感動して泣いてくれる子もいたし、私にもサプライズをしてくれる子がいたりして、もっと、もっと、相手に喜んでもらいたいって気持ちが強くなったのを覚えている。

そして、私は今、ある人の誕生日のためにどんなサプライズをしようか一生懸命考えていた。ある人とは、同じ学科で一緒に生徒会に入っている天羽翼。翼の誕生日を祝うために、一週間前から生徒会のみんなや梓にいろいろ翼の好きなものについて聞いて回っている。…だけど、みんな答えることは一緒。「翼は靴下以外のものには何でも興味を持つ」らしい。…どうしたらいいんだろう。とりあえず、プレゼントに靴下は絶対ダメだということが分かった。だけど、それ以外はまったく分からない。私はついに最終手段に出ることにした。


「翼、欲しいもんある?」
「ぬ?」
「だーかーらー!欲しいものは何ですか?って聞いてんの」
「名前が俺にそんなことを聞くなんて珍しい…」
「うぐっ!」


まさか、気づかれたか…!と、思ったのも一瞬だけで、翼は作詞作曲したというラップを歌いながら「欲しいものかー…」と言った。さっきから歌詞が「ぬ」しかないのは気になるけど、とくにつっこみはしない。


「ないっ!」
「…はぁ?」
「とくに今はないな〜」


…翼って、本当に今を生きる健全なる男子高校生なわけ?普通、欲しいものは何?って聞かれたら、いっぱい出てくるでしょ!?ちなみに私は今、新しい音楽プレイヤーがすごく欲しい。誰か買ってくれないかな…。…で、翼は欲しいものがないときた。ますますどうしたらいいのか分からない。


「なんでもいいよ?なんかないの?」
「うぬ〜…」
「ほら、新しいネジとか」
「…ネジはいらないけど…あ、」
「なになに?」


翼は何かをひらめいたかのように、手のひらにこぶしをポンッと乗せた。なんだろう?翼のことだから、やっぱり発明品に関する何かだろうな〜…。研究費とか言われたらどうしよう。予算は3000円以内だぞ、この野郎。女子高生のお財布事情なめんじゃねぇ。なんて思っていたら、翼は人差し指を私の方に向けた。


「…なに?」
「名前。名前がほしい」


…今、この目の前でぬはぬは笑っている男はなんて言った?え、なに?つっこみ待ちですか?つっこんでほしいの?なんでやねんっ!って手首にスナップきかせてビシッと叩いてやったらいいの?とりあえず、こっちに向いている翼の人差し指を折り曲げた。


「痛い!痛い!痛い!」
「翼、人に指を指したらダメッて学校で習わなかった?」
「だからって、指を折ろうとするのはないだろ!」


いやいやいや。何を言ってるんだね?翼くん。君が意味の分からないことを言い出すのが悪いんじゃないか。そうやって、意味の分からないことを言って人を混乱させるのは、あの一樹会長一人で十分だ。生徒会のつっこみ不足を甘く見ていると、痛い目にあうよ。


「で、欲しいものは?」
「だから、名前だってば!」
「あんた、それ本気で言ってるの?」
「ぬはは!俺はいつでも本気だぞー」


…翼のそれが本気だとしても、込められている意味によって私の態度も変わる。翼のそれは、一般的に言えば私を彼女にしたい、みたいな意味なんだろうけど、まさか翼が私を彼女にしたいと思っているとは思わないので、違う。次に考えられるとしたら、鑑賞目的で私が欲しいということ。私よりも月子の方が適役だから、これも違う。と、すると…あぁ、あれだ。翼は私を翼専属のパシりになってもらいたいってわけか。私をパシりにしたいとはいい度胸だ。よっし、受けてたとう。


「分かったよ、翼」
「ほんとか!?」
「その日限定だけどね」
「ぬ?」


頭にはてなマークを浮かべて首を傾げる翼。ふふふふふ、今は意味が分からなくってもいいのだよ。あ、翼の口調が移っちゃった。じゃなくて、散々私を混乱させた分、誕生日には思いっきりサプライズしてやる。とりあえず私は、翼に「覚えとけよ!」とだけ言って教室から出て行った。



――――……



翼の誕生日当日。朝から私の気合いは十分だ。翼には朝早くに生徒会室に来るように伝え、生徒会のみんなに手伝ってもらって飾り付けした生徒会室に、みんなでクラッカーを持って翼が来るのを待ち構える。しばらくすれば、またあの翼が作詞作曲したラップが聞こえてきた。

ガラッと翼が扉を開けた瞬間、私たちは一斉にパパパーンッとクラッカーを鳴らした。


「ぬわっ!?な、なんだぁ?」
「「翼(くん)、お誕生日おめでとう!」」
「みんな…」


その瞬間、翼の瞳がうるっとしたのが分かった。…ふふん、驚くのはまだまだこれからよ。先輩たちが先に翼へのプレゼントを渡して、私は最後に翼に昨日徹夜で作ったたすきを渡した。


「なんだこれ?」
「私にかけてみて」
「こうか?」


フワッと翼が私にたすきをかける。たすきには『あなたのために走ります』と刺繍した文字が書かれていた。私が「どう?今日一日だけだけどね!」と言えば、翼は意味がよく分かっていないようで、きょとんとしていた。生徒会のみんなも、翼につられてきょとんとする。


「? 翼、欲しかったんでしょ?」
「おい、翼。名前に一体何が欲しいって頼んだんだ?」
「欲しいって…あ!あれのことか!」
「翼くん、何て言ったんですか?」
「んぬ〜…俺は名前が欲しいって言ったんだけど…」


翼がそう言った瞬間、ぶはっと一樹会長が腹を抱えて笑い出した。何がおかしいんですか?一樹会長。会長は一通り笑ったかと思えば、「だったら、俺たちは邪魔だな」と言って、颯斗先輩と月子先輩を連れて生徒会室から出て行ってしまった。


「会長たち、どこ行くんだろ?」
「…俺、名前のそういうところが好きだそ!」
「へ?」
「鈍いというか、ちょっと変っていうか」
「何それ?誉められている気がしない」
「そんな名前だから、俺は好きになったんだよ」


…はい?よく分からないという顔をした私を、翼はぬはは、と笑って抱きしめた。つまり、あの言葉の意味は、もしかして、一般的な、あれ、でしたか?






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翼、誕生日おめでとう!

13/02/03
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