Starry☆Sky | ナノ
星月学園を卒業して、俺は大学生になり、そして弁護士になった。やりたいこと、見てみたいもの、興味のあることは何でもやった。後悔なんてものはない。むしろ、これから訪れる未来に心を弾ませている自分がいる。

こんな感情を教えてくれたのは、名前だった。そういや、あいつ…元気にしてるのか?

「不知火弁護士、お手紙です」
「ああ、そこに置いておいてくれ」

仕事が一段落ついて、さっき持ってきてもらった手紙を見る。裏には、懐かしい名前の名前があった。久しぶりに見るあいつの名前に思わず顔がほころぶ。だけど、手紙なんて珍しいな…?表を見て、思考が止まった。

「あいつ、結婚するのか…」

手紙の正体は結婚式の招待状だった。思考が止まったのは、もしかしたら俺がまだ、名前のことを…。

俺と名前は高校生の頃付き合っていた。いつも一緒にいるのが当たり前で、隣を見ればあいつがいて…。だけど、些細なことがきっかけで俺たちは別れた。あの日のことを…俺は…いや、後悔はしていない。当時は後悔していたが、俺ももういい大人だ。いつまでも、後悔しているわけがない。

だが、こうしてみると…俺はまだ、心のどこかであいつのことが好きだったのかもしれない。

「そっか、名前が結婚かぁ…あいつ、幸せになったんだな…よかった」

そのまま手紙を机の上に置いて、俺は立ち上がって部屋にある窓から空を見上げた。星月学園にいたころにみた星空とじゃあ比べものにならないが、星はどこで見ても綺麗だ。そういえば、名前は毎日星空を見上げていた。そんなあいつの星を見つめる瞳が綺麗だったことを、今でも覚えている。

永遠の愛なんて言葉があるが、永遠に続かない愛だってある。だからこそ、今の俺は…あいつの幸せを願う。もしかしたら名前も、どこかでこの星空を見上げているのかもしれない。きっと、あいつの隣には俺じゃない誰かがいて、二人のお揃いの指輪を重ねて微笑んでいるんだろうな。

「後悔していないといえば、嘘になる。だけど、お前が幸せならいい」

机に置きっぱなしだった手紙を拾い、出欠確認のところに丸を入れた。

「おい、頼まれてくれないか?」
「はい、なんでしょう」
「これと、あとこれに花を添えてここに送って欲しいんだ」
「結婚式の招待状ですか…あれ?行かないんですか?」
「この日は予定が合わなくてな」
「分かりました。花は何にいたしましょう?」
「…トルケスタニカで頼む」
「承りました」

…結婚式には行かない。代わりに、俺の想いを込めた花束を名前に送ろう。純白の衣装とお前の笑顔にきっと似合う花だ。トルケスタニカの花言葉は…「失恋」。俺との思い出をいつまでも…お前の中に残しておいてほしい。ははっ、いつからこんなに女々しくなっちまったんだろうな…。

なぁ、お前は今笑顔でいるのか?…幸せでいるのか?本音を言えば、俺の手で幸せにしてやりたかった。だけど、きっとお前が選んだ相手なら、俺以上にお前を幸せにしてくれるはずだ。俺はそれを願う。お前の幸せが、ずっと、ずっと続くように…。

「愛してた、ぜ」

一人星空を見上げてつぶやいた言葉は誰にも届かない。だけど、それでも俺はあいつに届いたらいいと、強く願わずにはいられなかった。







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song:Hi-Fi CAMP/トルケスタニカ

12/07/10
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