Starry☆Sky | ナノ
※ 宮地生誕記念


今日が何の日か、誰にも言われなくても分かる。今日は俺の誕生日だ。でも、それでもいつもと変わらない日常だと思っていた。昼休みに弓道場に行くまでは。

「何やってるんだ、あいつら」

弓道場には、白鳥、犬飼、小熊、木ノ瀬、夜久、それに弓道部のマネージャーの名前がいた。まだあいつらは俺の存在には気づいていない。昼休みに弓道場にこんなに人が集まるのは珍しい。インターハイ前だったらまだ分かるが、今はもう秋だ。名前は寒くて外に出たくないとまで言っていたのに…。たが、何か不自然だ。さっきから弓を的に射る音がまったく聞こえない。不審に思い、弓道場の扉を開けようとしたところで、誰かに肩を掴まれた。

「部長!」
「しーっ。あと、もう部長じゃないよ」

俺の肩を掴んだのは金久保先輩だった。金久保先輩は立てた人差し指を口の前に持って行って、俺に静かにしろと合図を送った。部長が言うには、今は弓道場には入ってはいけないらしい。俺としては、神聖な道場で騒ぐあいつらを注意したかったが…。金久保先輩に止められたら逆らえない。俺にとっての部長は、いつまでも金久保先輩ただ一人だ。

仕方なく、来た道を戻る。今日の放課後は部活がないから、今のうちに弓を射ておきたかった。はぁ、とついたため息は誰にも聞こえない。誕生日なのについてないな。別に、誕生日だから運が良くなるとは思ってないがー…。はぁ、と本日二回目のため息をついた。






「龍之介、ちょっと寄りたいところがあるんだけど…」
「? ああ、別に大丈夫だ」
「本当?」

こうして俺と名前は毎日一緒に帰っている。まぁ、付き合っているからな。最初は緊張のせいで何も喋れなかった帰り道も、今では普通に歩ける。寄りたいところがあると言った名前について行った先は、弓道場だった。今日は部活がないということは、こいつもちゃんと知っているはずだ。弓道場の扉の前に着くと、名前は振り返って俺に扉を開けろと言った。本当に何なんだ…?いろいろ不審に思いながらも、名前に言われた通り、扉を開けた。

パパパパパーンッ。

「「お誕生日おめでとう!」」
「…っ」

驚いて何も言えないとは、こういうことを言うのか。開けた扉の先には、昼休みに弓道場にいたメンバーと金久保先輩がいた。みんな、手にはクラッカーを持っている。これで、昼休みにこいつらが弓道場にいた意味が分かった。「ありがとう」と言えば、後ろから名前がいきなり抱きついてきた。人前だからと照れる俺をよそに、名前は楽しそうに笑って「龍之介、お誕生日おめでとう!」と言った。

「宮地部長、顔、真っ赤ですよ?」
「黙れ、木ノ瀬」
「今日のサプライズは名前ちゃんが考えたんだぞ!ありがたく思えよ」
「…そうなのか?」
「うん!」

今だに俺から離れない名前が、また楽しそうに笑った。そして、俺たちは綺麗に飾り付けられた弓道場に入る。昼休みはこれの準備のためにみんな集まっていてくれたんだな…。弓道場に設置されたテーブルの真ん中には、バースデーケーキが置かれていた。言われなくても分かる。これは、うまい堂のバースデーケーキだ。俺が前に一度だけ、名前に食べてみたいと言ったものだった。ここまで徹底的にやるとはな…。名前の方を見れば、また楽しそうに笑っていた。本当、あいつはよく笑う。その笑っている顔が好きだとは、本人には口が裂けても言えないが…。

「龍之介、楽しい?」
「ああ」
「よかった!一週間前からずっと計画していたの。龍之介に喜んでもらいたくて」

…ここが弓道場じゃなかったら、俺は間違いなく名前にキスしていた。未だに笑い続ける名前の耳元でボソッと「ありがとう」と言った。そしたら、あいつはまた笑って「どういたしまして」と言った。本当、お前のおかげだ。ここまで楽しいと思った誕生日は、今日が初めてだ。その後は、ケーキを食べ、他のみんなからプレゼントをもらい、俺の誕生日会は終わった。

弓道場からの帰り道。名前と星を見上げながら帰る。すると、名前は突然立ち止まった。つられて俺も立ち止まる。名前の方を見れば、名前は俺を見つめ返した。何かを言いたそうに、口をパクパクと動かしながら目を泳がせている。とりあえず、俺は名前が何かを言うのを待つ。しばらくして、名前は決心したかのように、目を閉じて、また開いた。

「あ、あのね」
「ああ」
「金久保先輩に龍之介は何をプレゼントしたら喜ぶかなって相談したの」
「金久保先輩に?」
「そ、それで…金久保先輩は、あたしから龍之介にキ、キスをしたら喜ぶって」
「なっ!?」

あの人は一体何を言っているんだ!?そりゃあ、名前からキスしてもらえることは嬉しいに決まっている。だが、こいつには無理だ。変なところで恥ずかしがり屋なこいつにとって、俺に自分からキスをすることは一大決心だろう。今だって、頬を赤く染めて目に涙を溜めて俺を見つめる。その姿に思わず可愛いと思ってしまったが、俺にはどうすることも出来ない。…だが、「キス、してくれるのか?」と名前に聞くと、名前は俺に目を閉じるよう言った。大人しく目を閉じて、名前が動くのを待つ。

「…うぅ」
「…どうした?」
「き、緊張する」
「…俺だって、緊張している」
「うん…」

唇に柔らかい感触がした。マシュマロみたいなその感触は、触れたかと思うとすぐに離れてしまった。だが、俺はそれを許さない。すぐに離れてしまった唇を追いかけて、捕まえる。逃がさないように、名前の頭の後ろに手を添える。さっきまで、ずっとこいつにキスをするのを我慢していたんだ。俺はもう…止まらない。

「りゅ、の、すけ…」
「…好きだ」

そう言ったら、「私も」と言って名前はまた目を閉じた。







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12/11/03
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