君の目は嘘のはきかたを忘れさせる
小さい頃は妹や弟が欲しかった。
だから、兄や姉、弟や妹とか居る子が羨ましかった。
だけど………
「(………キョトン)」
「…………」
「(………パチクリ)」
「…………」
「(………コテン)」
「………剣城?」
「おねぇちゃん、だれ……?」
「………お姉ちゃん、じゃないよ」
目の前に居るのはちっちゃくなっている剣城……のはず。目や髪型にはどことなく中学生の剣城の面影がある。
「え〜〜と、自分のお名前は言えるかな?」
「つるぎ、京すけ!!」
「………いくつ?」
「3さい!!おねぇちゃんは?」
「お姉ちゃんじゃないよ、お兄ちゃん………神童拓人だ」
「おにぃちゃん?京すけのにぃちゃんはにぃちゃんだよ?」
「………へ?」
「うん?」
う〜〜ん……天馬の話では、確か剣城がシードになった理由は怪我をして歩けないお兄さんの手術費の為だったって言ってたな………じゃあ、ちっちゃい剣城にとってはお兄さんは一人だけって意味だから、俺の言ってる意味が分からないのかな?
「(キョロキョロ)……たくとおねぇちゃん、京すけのにぃちゃんは?」
「えっ?」
「いっしょにサッカーやるって………京すけ、にぃちゃんとやくそくしたんだよ?」
「え〜〜と……?」
部活も無いので折角だし、普段出来ない資料整理でもしようと部室に来たらちっちゃい剣城を見付けたので、この場合、俺が剣城の面倒を見るべきか?
「………あ、あのな……剣………京介君のお兄さんは、お家のお手伝いを頼まれて、来るのが少し遅れちゃうんだ………だから、それまで代わりに俺が京介君と遊んであげる!!」
「………サッカー……おねぇちゃんと?」
だから、お姉ちゃんじゃないっと喉元まで言葉が出掛かったが、何とか耐えた。
取り合えず今は剣城を……京介君を安心させてあげるのが大切だろうからな。
「…………(じっーー)」
「…………だ、駄目だったかな?」
「………ううん、いいよ!京すけ、にぃちゃんがくるまで、イイコにしてるから!!」
「そうか!良かった!!嬉しいよ
「………っ……(ぽぽっ)」
その後、グラウンドに出て京介君とサッカーで遊んでいると剣城を探しに来た天馬や信助も(何か約束でもしていたようだが、驚いたのは京介君をあっさりと剣城だと認めた事だ)加えて、仲良くサッカーで遊んだ。
京介君は信助が自分と同い年だと思っていたのか、自分より上手にボールをゴールに決める信助に対抗したりと剣城にも可愛らしい時があったのだと天馬と話しをした。
一先ず、そうやって遊んでいると京介君も疲れたようで部室に戻り休憩していると………
「………すぅ………すぅ………んぅ………」
「(………寝ちゃった……)」
京介君をソファに座らせて、たくさん動いて喉が乾いているだろうからドリンクを用意して戻って来たら、座ったまま眠ってしまていた。
「(取り合えず、ちゃんと寝かせてあげるべきだな)」
そう思って、タオルを簡単に畳んで枕を作り京介君の頭を起こさないようにゆっくりと乗せて毛布はないから代わりに俺のジャージを体に被せてあげた。
「(………もうちょっとこのままでもいいかも……)でも……俺だと役不足だよな………」
イイコでいると言って笑顔で居ても、お兄さんが迎えに来るという嘘を信じてチラチラと周りを気にしていたし、そのせいで色々と京介君を気疲れさせてしまったのだろうか?
「でも、今日は何だか………君のお兄ちゃんになったみたいで楽しかったよ……京介……」
「………はにゃ……」
「ふふっ」
こんな剣城はもう二度と見れないだろうから、携帯で写真でも撮っちゃおうかな?
そして、俺が少し席を外し戻って来ると剣城は元の中1の剣城に戻っていた。
やっぱり、あと少しくらい京介君のままで居て欲しいとも思ったが、気の抜けた剣城の寝顔もレアなので良しとする事にした。