そしてまたきみへの好きが一つ増える

風が、そよぐ
貴方が、振り向く



「好きだ」と気付いたのは、いつだったのだろう?

貴方の姿を見つけただけで幸せな気分になれたのは。



部活の短い休憩時間。

貴方の後ろ姿を見つめながら考える。


風にのって柔かな花の香りがする。

俺の一番好きな貴方の香り。

綿菓子のようにフワフワなアッシュブラウンの髪を揺らして、貴方が振り返る。

チョコレート色の大きな瞳が、俺を捉える。


体が緊張するのが分かった。


「…剣城?」

キャプテンが俺の名前を口にする。

ただ、それだけなのに今度は顔がポワンと熱くなるのを感じた。



と、次の瞬間、キャプテンの顔が俺のすぐ目の前にあった。


鼻と鼻がぶつかりそうな距離。


あれ?
いつもよりキャプテンの顔が近い…?


花の香りが強くなる。


「なんだか顔が赤いような 気がするが…。
どこか具合でも悪いのか?」

上目遣いのキャプテンが、心配そうに俺の顔を じっと見ながら訊ねた。


跳ね上がる心拍数。

「だ、大丈夫です。
キャプテン、心配をかけてしまい すみませんでした。」

俺は必死にポーカーフェイスを装って返事をした。

「そうか…。」

視線を交わしたまま 距離が離れる。


…もしかして キャプテン、さっきまで背伸びをしていた?

だから、いつもより2人の距離が近かった?


「皆っ!
5分後に練習再開だ!」

心地よい、キャプテンのアルトボイスが響いた。


俺が忙しく状況を分析していると、再びキャプテンとの距離が近づいた。

「剣城、
もうすぐ 練習が始まるが辛かったら すぐに言うんだぞ?」

「…分かりました。」


うん、と優しく微笑んで
キャプテンはグラウンドの中央へと 走って行った。

離れていくキャプテンの背中を見つめながら、先ほどの出来事を思い出していたら、また顔が熱くなった。

胸がくすぐったいような、こそばゆいような。


「好き」な人に会うと こんなにも気持ちが ざわつくものなのだろうか?

キャプテンが、兄さんと同じぐらい 大切で「大好き」な存在になっていたのは知っていたが…。


兄さんに対する「好き」と、キャプテンに対する「好き」は違うもの?

じゃあ、どこが違う?


戸惑う脳をフル回転させてみるが、答えは見つからない。



まあ、でも きちんと考えれば答えは出るだろうし、とにかく今日は 超至近距離で優しいキャプテンが見れたラッキーな一日だ と自分を納得させ、俺もグラウンドへと走っていった。

悩んでいて練習に遅れるわけにはいかない。

だって、そこには――


「大好き」な貴方がいるのだから。



『そしてまた一つ きみへの好きが増える』


(このドキドキが「恋だ」と気付いたり、背伸びをするキャプテンって可愛い!と思うのは もう少し先の話)




あとがき

はじめまして。
「なたく」です m(__)m

人生 初!小説に かなり緊張しています。

剣城くんがヘタレになったり、グダグダ展開になったりと 反省点だらけです…。


ここまで読んでくださり ありがとうございました!




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