「今日は流しそうめん大会をしたいと思います!」
探偵社に入るなり、ででん、と大々的に発表したのにテンション高めな人は賢治くんと乱歩さんと太宰さんぐらい。
「皆テンション低いー!流しそうめん大会だよ!?休みだよ!?国木田さんのお金でやりたい放題食い放題だよ!?」
と言うとおお!とちょっとテンションが上がった皆さん。
でもそこで私に食いかかるように突っかかって来たのが国木田さんだ。
「おいちょっと待て名前なんでそこで俺の名前が出てくるんだ」
「え、だって国木田さんのお金で善意で流しそうめんセット買いましたから!そこで私の異能力『自由創造』を使えば完璧!私の異能で創造空間を作りそこに流しそうめんセットをセットする→皆で流しそうめん大会ー!もう最高ですね!」
「待て、俺は名前にそんなお金渡した覚えもないしそんな予定はどこにも書いてないぞ」
「太宰さんから暗証番号、通帳受け取りました」
サラッとそれはもうなんでもないような感じで言うとブチ切れ私と太宰さんに詰め寄る国木田さん。
「おい太宰なんでお前が俺の通帳も暗証番号も知ってるのだ…!」
「え、それは企業秘密。ねー、名前ちゃん」
「ねー、太宰さん」
朗らかに意思疎通する私達に対し国木田火山こと国木田さんは大噴火した。
「お前らには申し訳ないとかそういう気持ちはないのか!?!なんで人の金でいつもそうやって俺を困らせ…!」
「えーあるけど国木田さんだしいいかなって」
ねー、と太宰さんと2人頷き合う私達。
「きっさまらという貴様等は人を何度愚弄すれば…!」
「ねー、国木田ー。お説教はいいからさーもうお昼だし僕お腹空いちゃった。流しそうめん食べたーい!」
「流しそうめん…よく僕の田舎でもやっていました!」
「流しそうめんかねェ…名前には聞くがやったことないねェ」
「鏡花ちゃんは流しそうめんした事ある?」
「ない」
「じゃあ楽しみだね」
和気藹々と盛り上がる外野にこの中では一番偉い乱歩さんの言葉にぐうの音も出ない国木田さん。
(乱歩さんナイスゥー!)
と心の中でグッと親指を立て乱歩さんに念を送ると通じたのかにこりと笑われた。
(好き!)
と私が愛おしさで爆発してると名前ちゃん早くぅーと年を送られたので私はその場で異能力『自由創造』を使い田舎風な風景と国木田さんの善意(あくまで善意)で買った流しそうめんセットをよっこらせ、と賢治くんに運んでもらい水を流し皆さんにめんつゆを配り私は階段に登り皆さんに簡単に流しそうめんの説明をした。
「みなさーん!私がここから流しそうめんを流すのでそれを上手にお箸ですくい取り食べてくださーい!それじゃあいっきますよー!」
掛け声とともに流しそうめんと冷えたトマトやきゅうり、切ったスイカを流す。
ここで抗議の声をあげるのは勿論国木田さんだ。
「おい待てなんかそうめん以外も流れてきてるぞ!?」
下でお箸を持ち綺麗な姿勢で構えてた国木田さんは狼狽えながら言う。
「賢治くんの家のお野菜達です!美味しいですよー!」
「僕の実家で育った野菜です。美味しく食べてください」
にっこりと賢治くんの笑顔になんの抗議も出ない国木田さん。
(くくく…)
私が内心あくどい笑みを浮かべてると鏡花ちゃんがどうも初めてそうめんを取れたらしく感動している。
「……」
無言の割には嬉しそうな鏡花ちゃん。
それを見守りよかったね、という敦くん。
(ウッ眩しいぜ君ら…)
2人の広大な光にやられてると下からそうめんまだー?という抗議が上がったので私は慌ててそうめんなどを流す。
「このトマト甘くて美味しいよ賢治くん!」
「ありがとうございます谷崎さん!」
「このきゅうりもシャキシャキしててみずみずしくて美味しいねェ賢治」
「ありがとうございます与謝野先生!」
「このスイカあっまーい!賢治ナイスゥー!」
「ありがとうございます乱歩さん!」
「賢治くんの家の野菜は美味しいねェ」
「ありがとうございます太宰さん!」
「…そうめん、美味しい……」
「よかったね、鏡花ちゃん」
微笑ましすぎて光が眩しすぎて直視出来ねぇ…!と1人遊んでるといつの間にか階段を上がってきたのか後ろを振り返ると国木田さんがいた。
ヴワォ!?って変な悲鳴をあげながら落ちそうな私を軽々とキャッチしてくれた国木田さん。
「一体貴様は何をしてるんだ…」
「いや国木田さんこそ…混ざらなくていいんですか?そうめん流しなどは提案者の私がやりますよ!」
胸を張って言うも相手は何故か無言。
?と思い国木田さんを見るとバツが悪そうな顔をしていた。
「……その、さっきは怒鳴って悪かったな…」
重々しい口調で言った謝罪の言葉。
それに対し私は、え?なんのことです?ととぼけてみる。
「お前なぁ…!人が真剣に謝ってるのに…!」
「うふふ、嘘ですよ国木田さん。こちらこそ勝手にすいません」
ぺこりと頭を下げ謝罪をする。
「ああやって皆さんの喜ぶ顔が見たかったから…」
「名前…」
「たまにはこういうのもいいでしょ、国木田さん」
笑顔で言うと…ああ、とぶっきらぼうだが小さい声で同意してくれる国木田さん。
それにうふふ、と笑ってると国木田さんは何かを思い出したのか私に確認してきた。
「名前、お前の異能は好きなところに自分の知っている好きな空間と好きな創造物を作れるんだよな?」
「?そうですよ」
「なら流しそうめん台も創造すればよかったんじゃ…」
という国木田さんの言葉が終わる前に私は太宰さんとお互いに手を伸ばし交代してた。
「まぁまぁいいじゃないか国木田くんちょっとの出費ぐらい」
「おいこら行く手を阻むな…!名前を捕まえさせろ!」
「まぁまぁ楽しい場なんだから空気を読みなよ国木田くん」
「太宰ー、食材まだー?」
「今流しますねー、乱歩さん」
太宰さんは国木田さんを上手くかわしながら食材(そうめん、トマト、きゅうり、切ったスイカ)を流していく。
うほほーい!と私も混じりおいひいー!と頬を緩ませる。
「太宰さんまだまだあるのでこいこいですよー!」
「はいはーい」
そうして楽しい流しそうめん大会は終わった。
………………後日。
「な…、な、なんだこの引き通し額は!?」
と、国木田が名前と太宰を追い詰めるのもまた別の話。