Clap
うぉぉぉぉぉおお!



我が校には恐ろしく顔面偏差値の高い奴らがいる。
だが神は二物を与えないとは本当の事のようで、奴らは顔面が良くてもほぼ全員がかなり難ありの人物だ。何かしら飛び抜けた才能はあるようだが人間最終的には中身で勝負だろ。負け犬の遠吠えとかいうな。


そして私はどういうわけか、その面々とお友達である。


先にいっておくが、これは私が望んだ事態ではない。何か知らぬ間にあれよあれよと気が付いたら私の周りは奴らで固められていた。私の静かな学園生活を返してくれ。
その中でもまぁ、抜きん出てよく絡む奴がいる。
それがこの男。


「はぁー…もう本当疲れたぁー俺様やってられないよ。癒してー!!」


ひたすら本を読んでいる私の目の前の席に陣取って私の机に突っ伏し駄々を捏ねているこの男だ。田中君の席だぞお前田中君が可哀想だろ、席つけなくて本気で困り果ててるじゃねーか。



一向にどく気配がないので田中君が可哀想になり、口を開いた(ちなみにずっと無視してた)。


「今度は何?真田が大気圏突入した?」

「…ふざけてるでしょ…人が真剣に困ってるのに…」

「とりあえずあんたがその席にいると田中君座れないんだよ。どきなさい。」

「俺様席替えしたーい、この席がいいー「黙れ小僧。」」


大抵奴がこうなると、何時ものパターンで全く話が進まない。
ため息をこぼし、読んでいた本を閉じる。


「わかった、話し聞いてあげるから中庭行こう。」

「本当!?やったー俺様大感激ー!」

「はいはい。」

元気じゃねぇか。というツッコミをしたいところだが、このタイミングでそれを言ってしまうと余計に面倒なことになるので今は控えておく。
テンション高めに教室を出て行く佐助について行く。途中で私の癒しであるかすがに呆れた表情でまた付き合ってやってるのかと言われた。
そんなこと言うなら私の前の席を占領する前にこいつにいってやって欲しい。


中庭に着く。
いつもの場所、いつもの匂い。ここは私も心が落ち着くから学校の中でも好きな場所だ。
いつものベンチに2人で座る。
私は黙って本を開いた。

「マジであの人らこっちのこと考えないんだもんなー…。真田の旦那も竜の旦那も暴れる割りに片付けしないし。それを片してるの俺様だぜー?なのに礼の一つもないんだからさぁー本当やんなっちゃうよなぁー。」

「そういや、この間も。みんなで帰りにファミレス行ったんだけど、飯食ってる途中で旦那たちがヒートアップしちゃって。騒ぐし張り合うし、しかも鬼の旦那と毛利の旦那も言い合い始めるしさぁ…あんまりうるさいから店員来ちゃって俺様と右目の旦那が必死に謝って店出たのに問題児は反省の色がないしでさぁー。」


その後も、似たような内容の愚痴が続く。
これも、何時ものこと。

佐助が愚痴って、
本を読みながらその愚痴を私が聞く。

そしていつもの通りに

「それでさぁ…「佐助。」ん?何よー。」


「お疲れ様。」


そういってイチゴの飴を渡すのだ。

そうすると、彼は嬉しそうに少しだけ頬を赤らめてはにかむのだ。
わたしはその表情が好きで、だから、なんだかんだいいつつわたしに寄りかかろうとする佐助を無下に出来ないのだ。よくわからない。
自分の事ではあるがなんとも、情けない話だと思う。


いつもと同じ流れだというのにご機嫌になる奴も奴だが、いつもと同じことをしてしまう私もわたしだ。
何故だか妙に焦りだけが募る。この気持ちは一体なんなのか。
一つ、佐助に聞こえない位の小ささでため息をついた。


それに気付いていない様子で、ご機嫌になった佐助はわたしがあげた飴の包装を解き口に放り込んだ。
おや、いつもは食べないのに。
そんな事がふと頭をよぎった。なんだろう、違和感。いつもとちがう、いわかん。







気が付いたら、わたしの視界いっぱいに佐助の顔があって
くちびるに、暖かい温もりを感じて

瞬間、口の中に甘いイチゴが広がった。
ころりとわたしの口の中に転がる飴。

一体、なにが

少しだけ離れた佐助はすぅっと目を細めてじっとわたしを見ると目元を笑わせて至極優しい声で言ったのだ


「いつも俺の話聞いてくれてありがと。これからは、俺様が話、聞くから。」


時が止まってしまったように動けないわたしは、再度近寄って来た佐助の顔を見つめることしかできず。


2回目の暖かさを感じた瞬間
わたしの頭の端で


本が落ちる音がした。
(それは、恋に落ちた音だったかもしれない)




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