赤の世界の海は煮えるマグマで近寄れない
白の世界の海は一面の永久凍土
緑の世界の海は草だらけで海はない
紫の世界の海は死色で不気味に泡立つ死海で論外
黄の世界の海はおんなのこ専用らしく立ち入り禁止


よって、目の前の海は青の世界である


しかしながら海に遊びに行く暇なんかはなく、船上から眺めているだけ
好奇心旺盛な弾とズングリーは非常に残念そう
今回ここに来たのも、次の目的地へ向かう前に弾が海が見たいというので
お互い話し合った結果の上で少し迂回していくということで譲歩したのだ
ふてくされ気味な弾をズングリーが心配そうに見ている
その後方でお手上げのポーズをとっているのがクラッキーと魔ゐだ

疑問があるならば、弾がなぜ突然海にいこうなんて言いだしたのか
大方暑いからだろうと言及はしていない

「なんで急に海なんて言いだしたのかしら」
「僕たちには到底分からない事を考えているのさ、弾は」

ふてくされて聞いてなどいないと思っていたが、聞き耳を立てていたのか
すっと立ち上がった弾が早足で二人のもとへ歩み寄って来た

「だって!そろそろ夏だし!」
いつもの弾とは想像もできない剣幕で告げられたその言葉に思わず脱力してしまう
そんなわがままに付き合わされていたのかと怒りすら湧いてきそうだ

「弾、この状況でよく…」
「この状況だからこそだ!何があるか分からないからみんなで遊ぶんだろっ」

俯き気味に告げられた言葉にはっとした
いろんな事がありすぎて気がつかなったが、自分達には余裕がなかったのかもしれない
今回の移動もそうだ、以前なら多少の遠回りをしてもいいくらいの気持ちの余裕があった
現状に悩まされているクラッキーや魔ゐ達を見て、弾なりに考えた結果
先のような発言だったのかもしれない

「そうね、私たちはすこしカツカツしすぎね」

小さくため息をついて、魔ゐはセルジュに何かを告げると少しだけ乱暴に
ソファーへ腰掛けた

「今日は少しだけ休憩!でも海に行く暇はないから移動しながらみんなでお茶しましょう!」
先ほどのセルジュへの言付けはその為だったのかと納得した
キッチンでは執事がお茶の用意を始めている
「弾の言う通り、最近の僕たちには余裕がなかったかな」
意気込んだ弾の横を通り過ぎたクラッキーも魔ゐに習ってソファーへ腰掛ける
心配そうに状況を見守っていたズングリーも安心したのか
二人に習ってソファーを大きく揺らし飛び込む

ほっと、破顔し振り返るその部屋には、昔のように穏やかな空気が満ちている
切羽詰っているみんなと、戦うことしかできない自分がどうしたらみんなの為に
なれるか、考えた結果が悪い方に転んでしまった。
が、しかし、きちんと真意は伝わって、みんながまたこうやって一緒に過ごせるのが何よりもうれしい

「今は、そんな余裕ないけど全部終わって落ち着いたらみんなで異界の海を見に行こう!」
息をすって1拍置いたあと、3人へ告げたのは未来への約束だ
全部が終わって、平和な世界での海ならばどんなものにも変えられないほど綺麗だろう

「夏の海でも、朝の海でも、夜の海でもなんでもいいんだ」
「ここへ呼ばれたみんなで一緒の物が見ててみたいんだ」

テーブルを囲み3人が一堂に弾をみやった
各々が嬉しそうに笑顔を浮かべ、大きく頷く

「じゃあ絶対に約束だからな!」
「いいわよ、覚えておいて上げても」
「可愛いベイベがいるビーチだとなおいいけど、仕方ない覚えておくよ」
「楽しみなんだな!」

もうすぐセルジュが用意したアフタヌーンティーが出てくるだろう
4人だけで交わされた約束、船は進み世界も動き始めてこれからはもっと余裕がなくなるであろう事は明白だ
けれど、この約束があればどんな事だって平気そうだ
そう思わせる様なある日の午後3時




色あせない約束






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